食品成分表で野菜ジュースが野菜類扱いになった件について思う事

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野菜ジュース

【給食に野菜ジュース?】食品成分表で野菜ジュースが野菜類扱いになった件

食品成分表が2020年度版になりました。

2020年度版の中でのトピックの一つに「野菜ジュースが野菜扱いになった」というものがあります。

今回はこの野菜ジュースが野菜としてカウントできるようになった途端に起った一つのケースについて書いていきます。

 

給食に野菜ジュース?

これはYahoo!ニュースに出ていたのでご存知の方も多いかもしれませんが、ある学校で給食に野菜ジュースそのものや、野菜ジュースを使用した献立が提供されることがありました。

そこの栄養士曰く「これで野菜嫌いな子も野菜を摂取したことにできるし、摂取品目数も野菜ジュースの中に入っている野菜や果物の量増やすことができる(意訳)」という内容の発言をしています。

 

これに対してTwitterで食品成分表の作成に関わった方の書き込みがありました。(個人特定を避けるため、そのものは載せません)

これ1本で1日分の野菜350gがとれるなどとうたったジュース商品がわりと人気

→その野菜ジュースで本当に野菜350g分とったということでいいのか?

→いや違うよね。分析して成分表に載せましょう

Twitterより

 

本来はこういうことを知って欲しくて入れた、見える形にしたということなのですが、現場で献立作成に四苦八苦している栄養士に

「野菜ジュースで野菜摂取したことにして良くなった、ラッキー♪」

 

と取られてしまったり、その野菜ジュースメーカーが「野菜ジュースが野菜類に分類されたので、こんな使い方ができますよ」と営業をかけたり(これは本当にあった模様)した結果がこの学校給食に野菜ジュースというちょっとした騒ぎになったという感じです。

 

野菜ジュースの使用自体は悪くない

個人的に野菜ジュースを給食に使うべきではない!とは思っていません。

 

料理にコクを出したい、トマトベースのスープにアクセントが欲しい

野菜嫌いの人にきっかけとして飲んでもらう

こんな場合に有効打になることもあるためです。

 

ただ、野菜ジュースを使用して

これだけで野菜○○品目摂取した扱いにできる

野菜の使用を控えることができる

こう考えてしまう事には反対です。(特に栄養士がこう考えるのはちょっと・・)

 

なぜなら、野菜ジュースで摂取できるビタミンやミネラルは野菜由来のものではありません。

 

野菜ジュースメーカーもHPでこの部分については正直に書いています。

 

これは日本では飲料については加熱することが義務になっていて、この加熱の際に多くのビタミンやミネラルは壊れてしまうためです。

 

その代わり、ビタミンやミネラルを別途添加することで、野菜を摂取した時同様の栄養が摂取できるようにしているメーカーが多いです。

つまり、野菜ジュースという野菜の皮を被ったサプリメントを摂取しているわけです。(原材料の下の方にそれらしきものが並んでいます)

 

ここに野菜や果物○○品目分などと数えるだけの価値があるでしょうか?

野菜の摂取量と判断することが適正でしょうか?

 

真面目な栄養士程、献立を作成する際の数字にばかり縛られてしまってこういう矛盾を見逃してしまう傾向があると思います。

合理的と考える人もいるかもしれません。

 

でも、栄養士の仕事が単純な数字合わせのパズルになってしまったら、そこに専門職としての価値があるのか微妙です。

献立に何かしらの想いがあるはずで、それらを投げ捨ててしまう行為ではないでしょうか?

この方のTwitterには野菜ジュース使用に関して否定的な意見も多かったので、現場の栄養士やメーカーさんの考えるきっかけになってくれればと思います。

 

給食に野菜ジュースで懸念される点

給食に野菜ジュースを出して、「これで野菜を十分に摂取していることになります」と栄養士が発信したらどんなことが起こるでしょうか?

 

それを食べている子どもは

野菜は別に食べなくても野菜ジュースで良いんだ、と思わないでしょうか?

その家族にしても献立からそういったことを読み取ってしまうのではないか?

学校の給食には食育という側面もあると僕は勝手に思っていましたが、違ったのかな。

 

今後、もしかしたら僕のところにも野菜ジュースメーカーさんが「新しい食品成分表で野菜ジュースが野菜扱いになりましたよ、こんな使い方はどうですか?」と営業に来るのかもしれません。

その時までに自分の考え方をしっかり整理しておきたいと思える一件でした。

栄養士にとって襟を正す良いタイミングなのかもしれません。