運動の順番で効果が変わる
昔は運動部などでウォーミングアップを兼ねて長い距離を走らせてから、競技別の練習、最後に追い込むためなのか短距離ダッシュやシャトルランを繰り返す、という流れが一般的でした。
ジムに通う人も、最初に有酸素運動で心拍数を上げてからウエイトを使ったトレーニングに入る方が多く見られていました。
このところ、この方法は瞬発力の向上・持久力の向上にあまり効果的ではない、特に瞬発力に関してはこの方法では伸びにくいことが分かってきています。
今回はこの部分について少し掘り下げていきます。
瞬発力を伸ばすには最初にトレーニングを行う
瞬発力は100%に近い力の方が能力的に伸びやすい傾向があります。
ウエイトトレーニングでも、12回以上持ち上げることのできる重量だと、筋力向上と筋量の増加に対する効果は低くなり、筋持久力が伸びるようになるのは以前から知られているところです。
そのためMaxの80%以上の重さで8~12回がけが防止の点などからも推奨されやすくなっています。
瞬間的に大きな力を出す能力を伸ばしたいので、瞬間的に大きな力を発揮するトレーニングを行うことが求められるわけです。
あまり大きな力を発揮せずに行うことができる運動だと、持久力を高める方向になり、目的と異なったものになってしまいます。
このため、練習の最初の方など、比較的疲労が少なく、爆発的な力を発揮できる条件で行うことが瞬発力を効果的に伸ばす方法ということになります。
持久力を伸ばすには、疲れてからのトレーニング
持久的なトレーニングは疲れてしまってから行っても成果を上げることができます。
そして最初に行っても持久力は上がります。
瞬発力は最初の頃に取り入れる必要があることから、必然的に持久系のトレーニングが後になるというイメージです。
そして、持久力に関しては中長距離を走ることをしなくても、それぞれの競技特有のスキルを向上させるトレーニングの中で一緒に向上させることができるので、合理的に考えれば、ただ素走りさせるよりも、技術向上も狙えるこういった方法の方が今後は増えていくでしょう。
練習時間自体も合理的に行うことで短くなると思います。
運動の順番とトレーニング効果 まとめ
人間の体は100%の力を発揮すると、筋繊維が壊れてしまうことなどから、次に100%を発揮するまでに2日から3日程度のインターバルが必要です。
このため、練習の最初で瞬発力のトレーニングをすることは非常に大切になります。
これ以降は、本人は100%のつもりでも100%の出力が出ないという状態になってしまいます。
陸上100m走では強い選手が予選で力を温存して走る光景が見られます。
あれはもちろん相手を甘く見ているわけではなくて、予選で100%を出してしまうと、その疲労や筋繊維の損傷などから、決勝で100%の力が出せなくなってしまうことを知っているからです。
優勝を狙うレベルの選手になると、決勝までのコンディションを考慮してレースへの取り組み方も変わっていくわけです。
サッカーのプロチームなどでは、ダッシュやターンなどを繰り返すフィジカルトレーニングを中止するチームが増えています。
これは試合方式の練習の中で自然とダッシュやターンを行う環境を作り出すことで、十分な負荷を得ることができると考えているためです。
試合形式であれば、ある程度の距離と時間も走るので、持久力も身に付きます。
その後にフィジカルなトレーニングを行わないことで、次のトレーニングセッションまでに回復の時間もある程度とることができます。
長期的な強化を狙うのであればこういった方法は優れており、今後も広がっていく傾向になると思います。
知識を持つことで、練習を効率よく、頑張った分を身にしやすい状況を作ることは非常に大切だと言えます。
「たくさん走っているのに足が速くならない!」という方、練習の方法から見直してみるのはいかがでしょうか?
今回の話の例外として、練習の強度が十分でない場合については、別途強化するためのトレーニングが必要になりますので、ご注意ください。