食事形態は安全性と食事への想いが交差するもの

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食事形態について

一般的には食事形態言われてもピンとこないと思います。

病院や高齢者施設ではそれぞれの食札と呼ばれる

「誰の食事かを記載してある札」に

常食(普通食)、一口大、きざみ、ソフト食、ペースト(ミキサー食)、ゼリー食

などなど書いてある物が食(事)形態です。

食事形態を変える理由

食事形態は食べる方の食事摂取機能に合わせて選択されます。

これは食事を食べることの安全性を確保する為です。

基本的には噛む能力と飲み込む能力が判断基準で、その他に食事を口まで運ぶ能力などが考慮される場合があります。

噛むことができなければ、舌と上あごで押し潰せるかどうか

飲み込む能力によって、水分の多い食品は食べにくいなど

こういった条件によって変わっていきます。

そのため、途中で何らかの理由で食事摂取機能に変化が見られた場合には適宜食事形態を変更することもあります。

適さない食事を食べる事で起こるリスク

噛めない、あるいは噛む能力が十分ではない方に「噛まなければ食べにくい形態の食事」を提供したらどうなるでしょう?

全く噛まないか、噛み切れていないという大きな形のまま、丸呑みするしかなくなります

その場合には窒息あるいは誤嚥を起こす危険性が高くなります。

飲み込みに課題の有る方にしっかりと形のある噛み切りにく食事形態を提供した時にも

同様の課題が出てきます。

しかも飲みこみ(嚥下)に課題がある場合は水分も気管に入りやすくなっていることから、誤嚥性肺炎のリスクは随分高いものになっていきます。

最近、高齢者の方の死因として肺炎が上位に来る理由の一つに、誤嚥性肺炎も含まれています。

機能が低下してくると免疫も弱くなることが多く、食事形態が下がってくると、栄養摂取が十分にできなかったりするなど、複合的に健康状態を低下させることから、肺炎の怖さは若い頃の比ではなくなります。

こういった誤嚥や肺炎、窒息などが起きにくい、安全性を考慮して食事形態を変えていきます。

本人・周囲の想い

食事形態の課題として、形が変わってしまう、柔らかくするなど加工されてしまう事で、他の人と違う、(この場合は残念ながら良い意味ではなく)特別な食事になってしまう。

そうなると、「今までの食事を食べ続けたい」「今までの食事を食べ続けさせたい」

という想いが本院やご家族などから生まれてきます。

主な想いの数々として

・本来なら歯ごたえのあるものが食べたい

・手を加えられた食事への抵抗感

・まだ普通に食べられるのではないかという期待感

理由は様々ですが。「普通のものを普通に食べる」ということが取り上げられてしまうという部分は否定できません。

中には、「肺炎になっても良いから、普通に食べさせて欲しい」という話も聞きました。

ただ、誤嚥性肺炎で入院してしまうと、急性期には点滴など口から食べない期間ができてしまい、更に食事をする機能が衰えてしまうことが多く、結果として食事機能の大幅な低下が起こり、口からの食事摂取は危険と判断されることで、胃ろうになってしまうなど、口から食べるという事すら奪われてしまうことも多くあります・・

もちろん食事形態にどんなに配慮しても肺炎になる時はなりますし、どちらであるべきかという問題については言及しにくいところもあります。

最近はソフト食など、なるべく見た目が変わらない、噛まなくても良い食事もでましたが、どんなに頑張っても「違うものは違う」ので、扱う際の注意点は提供する側が「ソフト食まで提供しているのだから満足してもらえているはずだ」という自己満足で思い込まない事だと思います。

僕もたまにソフト食やペーストにした食事を食べる機会を設けていますが、

たまになら良いけど、これを毎食、そしてずっと食べ続けなければいけないと思うと、辛いというのが正直な感想です。

ただ、食事を提供する側としては、安全な食事は重要な部分なので、どうしても本人やご家族にこういった話をさせていただかないといけないことがあります・・・・

安全性も大事ですが、食事を楽しむ部分をどれだけ残せるかという課題はまだまだ解決まで長くかかりそうです。