短期間に大幅に痩せるダイエットは体に良くない
ダイエット系の宣伝の謳い文句として定着している
「〇カ月で〇〇㎏痩せる!」というもの
これは短期間で結果を出せるという意味で使用されていますが、この背景には
「ダイエットはかなりの我慢を強いるもので、それが短期間で済むから良いでしょ?」という言葉が見えてきます。
栄養士の立場から言わせてもらえば。本来ダイエットは習慣として正しい食事と運動のバランスを身に着けるためのもので、短期間に何キロ痩せられるかという我慢大会ではありませんし、無理に大幅なダイエットをすること自体・あるいは実行した後などにデメリットもあります。
今回はこの短期間の大幅なダイエットの問題点について書いていきます。
大幅なダイエットのデメリット
大幅なダイエットについて回るのが食事制限です。
基本的に運動だけで大幅に消費エネルギーを増やすことは困難なので、食事を我慢して摂取カロリーを少なくする必要があります。
いきなり話がそれますが、ダイエットサプリや運動器具のテレビ通販で
芸人の方などが簡単に痩せているものを見ますが、あのCMを撮影するために芸人さんが影でどのくらい努力しているのかご存知でしょうか?
個人的に芸能関係の仕事をしている身内がいるので知ったことですが、もちろん食事や運動もかなりの努力をしています。
ダイエットに成功しないとそのCMの話自体合がおじゃんになってしまうためですが・・・
つまりはそういった商品だけでうんぬんかんぬんというのは到底無理な話であるということです。
このように短期間で大幅なダイエットをするということは、短期間に我慢の濃度を濃縮して詰め込んだだけであり、個人的にはこれなら気持ち的にも長期間に少しの我慢の方が精神面の負担も少ないだろうと思います。
こういった精神的な負荷の大きさがまず最初の問題点になります。
この部分はあまり科学的ではないし、我慢はどんなに厳しくても短期間ならOKという人もいるので何となく頭に置いておいてもらえればと思います。
でも、短期間に大きな我慢をすると目標達成後に気持ちが緩んでリバウンドするのは宿命です。
その厳しいダイエットは生涯継続できるものではないからです。
ここも短期間の大幅なダイエットをお勧めできない理由となっています。
リバウンドが目に見えている方法は避けたいものです。
短期間大幅ダイエットのデメリット1:筋肉も減少していく
ダイエットは本来体脂肪を減らしたいものですが、大幅な食事制限を行うことで実は体脂肪よりも筋肉を減らしていくことも少なくありません。
大幅な食事制限で体は一時的な飢餓状態になります。
こうなると人間の体は「食べ物が手に入らない環境」と判断して、少しでも長く生存して食べ物が手に入るようになるまで耐えようとします。
その場合体脂肪は貴重なエネルギーを濃縮したものなので、なるべく使用せずに最後の手段として蓄えようとします。
そのうえ本来エネルギー源となる糖質が摂取されない状況が続くと・・・体は筋肉を必要最小限まで減らして。エネルギーを作り出します。
この時問題なのは、脂肪よりも筋肉が減っていくことで
・基礎代謝が下がる
・運動機能が低下する
・筋肉の方が体積当たりの重量が脂肪より重いので体重は減少する
・筋肉が減ることで体がたるんで見えるようになる
こういった点の変化が起こることです。
筋肉減少で起こること ①基礎代謝が下がる
基礎代謝は安静時にも使用されるエネルギーのことですが、筋肉は維持するだけでも一定のエネルギーを消費します。
筋肉量が落ちると基礎代謝も少なくなるので、使用するエネルギー自体が少なくなります。
使用するエネルギーが少なくなれば痩せにくくなるということになります。
基礎代謝は体温の維持なども関係しています。
あまりにも食事の制限をすると体温低めになってしまいます。
女性に冷え性が多い原因の一つではないかと考えられています。
筋肉減少で起こること ②運動機能が下がる
運動機能というと大げさですが、筋肉は人間の動きのすべてに絡んできます。
若いうちは少し筋肉が減っても問題が表面化することは少ないですが、これが高齢になった際に尾を引いてしまい、ロコモティブシンドロームへとつながることもあります。
実感するのは遠めの未来になるとしても階段の昇り降りが辛いなど、日常生活にも影を落とす可能性があるので、注意が必要です。
筋肉減少で起こること ③体重減少
筋肉は同じ体積であれば脂肪よりも重たいため、筋肉が減ると体重は大きく減少します。
でも、本当に減らしたいのは脂肪であったはずです。
体重という指標にクローズアップし過ぎるとこういったもっと大きな面で気にしないといけない部分を見過ごしてしまうこともあります。
体重だけでなく体脂肪率くらいまでは計測しておきたいところです。
筋肉減少で起こること ④体がたるんで見えてしまう
これが最も問題になる点だと思います。
ダイエットの目標は体重よりも「見た目・外見を良くする」というものだと思います。
筋肉は脂肪を持ち上げてくれる働きがあるので、リフトアップ効果のように締まって見えます。
筋肉が少なくなると脂肪を持ち上げる効果が少なくなるので全体がたるんでみるようになります。
こうなると体重と外見が一致しなくなり、体重は減ったのに輪郭がたるんでいるのでだらしない体に見えてしまうこともあります。
これはダイエットあるあるの一つで
いつからか体重計に乗り続けるうちに「体重の筋をいかに落とすか」だけにこだわるようになると、本来の目的から逸れた見た目が不健康なダイエットに突き進むことになってしまいます。
このように筋肉を大幅に減少させないためにもたんぱく質をきっちり摂取すること、最低限の運動は行うことを念頭に置きながらダイエットを行うことが大切です。
筋肉を減らしたダイエットは、リバウンド時に筋肉は減ったまま元の体重に戻ってしまうという悲劇につながります・・・・
これがダイエットをするたび、あるいは年齢を重ねるたびに痩せにくくなるメカニズムでもあります。
短期間大幅ダイエットのデメリット2:健康状態を乱す
上記で筋肉について細かく書いていきました。
これは筋肉の減少がダイエットの本来の目標と正反対に進ませるものだからです。
一方、食事制限でその他の栄養素も不足してくることで様々なデメリットが起こります。
カルシウムが不足すれば骨を溶かして骨の中のカルシウムを取り出すので骨はもろくなります。
たんぱく質は筋肉とも密接なつながりがありますが、爪や髪の毛、皮膚の材料でもあります。
たんぱく質が不足することで、爪や髪の毛からはツヤが失われ、肌もカサツキやすくなります。
他の栄養素についても不足することはこういった不都合につながってきます。
ちなみにダイエット時に敵と見られがちな脂質さえもホルモンの原料になるものです。
脂質を制限し過ぎたためにホルモンバランスを崩してしまい、自律神経などのトラブルに直面するケースもあるので、過度な食事制限は本来推奨されるものではありません。
本来ダイエットの目的としては「キレイに・恰好良くなりたい」「健康的になりたい」というものですから、それに逆行しないようにするためにも、食べながら痩せる必要があります。
過度なダイエットは拒食症の恐れも
知人で、糖質制限を始めたところ、順調に痩せたことから、体重の数字が減ることが楽しくなって
糖質を一切食べなくなる→食事全体をほとんど食べなくなる
こういったエスカレートをした人がいます。
途中からは「食べ物は自分の体重を増やす敵のように思えてきた」と話していて食べものと食べるという行為自体に嫌悪感を抱くようになっていました。
その話を聞くのがかなり遅くなったので、本人と話をした時にはすでに拒食症のような状態になっていました。
こうなると価値観がダイエットどころではなく「食べない」に集約されてしまっているので、メンタル的な部分が大きく、改善は数年を要しましたし、今でも健康的に食べられるわけではありません。
行き過ぎたダイエットは本人の価値観すら変えてしまうことがあります。
最初は周囲の目を気にして、外見を良くしたいなどの目的であったはずが、途中からは自分の価値観のためだけになり、食べないという周囲から見ておかしいというレベルであっても気にならなくなってしまいます。
何事もほどほどには大切な心構えです。
本来のダイエットとは
本来は運動量に見合った食事量(体重が横ばいになる程度)を見つけ出して現状維持する、あるいはそこからさらに500㎉程度減らして、月に1㎏~2㎏減らしていくくらいが良いです。
我慢も少なくて済むし、長期間に続けやすいです。
自分に合った量を食べ続けるという正しい習慣を身に着けることがダイエットです。
消費カロリー=摂取カロリーであれば体重は横ばい
消費カロリー>摂取カロリーなら痩せていきますし
消費カロリー<摂取カロリーなら太ります
一時期無理をして体重を減らしても、その我慢が続けられなければ必ずリバウンドします。
それはダイエット中に消費カロリー>摂取カロリーになっていても、ダイエット期間が終了して元の食生活に戻れば消費カロリー<摂取カロリーになるためです。
本当はダイエット中 消費カロリー>摂取カロリー
ダイエット期間終了後 消費カロリー=摂取カロリー
こういったバランスなる程度の我慢で済ますべきです。
正しい食事習慣を身に着けること=ダイエットは今後も口に出し続けていきたいと思います。
※かなり肥満の状態が重度の場合はちょっとした食事制限で月に10㎏など痩せることもあります。
食事のコントロールに無理がなければその減少量は気にしなくても良いと思いますが、あまり一般的ではないのでおまけ程度に。