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冷凍食品が良いか手作りが良いか
僕は厨房で働いているので、給食業界での冷凍食品への依存について考える機会はちょいちょいありますが、家庭でも冷凍食品に頼る割合は多くなってきていることも感じる機会が増えてきています。
今回は冷凍食品を使う際の僕の心の中を書いていきたいと思います。
冷凍食品は進化している
今までにも何回かこのブログに書いていますが、冷凍食品はまさに日進月歩という形で進化しています。
昔は冷凍食品があまり美味しくなかったので、使用する理由としては安価であること、作業工程が少なく済むことなど、提供する側の都合の良さだけが理由だったので、あまり冷凍食品を使用すると「手抜き」という感じで見られていました。
ところが、一気に冷凍食品がそのクオリティを挙げると、この状況が一変します。
安価(高いものもありますが)で、作業工程が少ない、その上美味しいとなると、例と王食品を使うことが提供する側だけでなく、食べる側にとってもメリットとなるような状況も生まれ始めました。
今回は分かりやすくするために冷凍食品という名称に絞っていますが、チルド品やお惣菜なども同様に美味しいまま食卓に並べることができるようになったことから、使用する側にとって、罪悪感なく使用することができるようになってきました。
冷凍食品のメリット
ここまでにも書いていますが、冷凍食品を使用するメリットは以下のようなものがあります。
①安価
実際に自分達で一から食材を用意するよりも安く購入できることが多いです。
このため、食材費に悩まされている栄養士や家庭の主婦にとって強い味方となっています。
冷凍食品の中にも品質などで価値を高め、高めの価格で販売するものも増えています。
それらの多くはその価格に見合った美味しさを持っているので、安価なだけがメリットでもなくなっている面もあります。
そうは言っても、食材を購入する立場の栄養士や主婦(主夫)からすると安いこと自体は相変わらず魅力的なので、冷凍食品購入の最大の理由となっています。
②作業工程が少ない
揚げ物などは特に顕著で、本来は食材に粉をまぶして、卵を絡ませて、パン粉をつけて・・・と揚げるまでにいくつもの工程を経るわけですが、冷凍の揚げ物の多くは、ダイレクトに揚げ油に入れれば出来上がってしまいます。
家庭では揚げ油の用意と片づけが大変であることからお惣菜で揚げてあるものを購入することもあると思いますが、給食現場では揚げたてを提供したいので、冷凍食品を使用して最後の揚げるところだけ自分達で行う形が多くなっています。
人手が足りない中で、作業の少なさ、調理時間が短縮できるというのは非常にありがたい話です。
美味しい
ここは一昔前との大きな違いとなっています。
冷凍食品を需要が高まる中で、各メーカーが冷凍食品に力を入れることで、更に手軽に、更に美味しくなってきています。
今後も需要は高まる傾向が続くので、更に高品質なものが出てくると予想できます。
それでも手作りをしたい理由
冷凍食品は便利です。
少ない人手で食事が完成する、更に調理技術や経験のない人でもすぐにできる。
現代にこれだけマッチしたものも少ないのでは、と思わせられます。
一方で、これまで手作りを良しとしてきた調理(料理)人の端くれである僕には、今でも冷凍食品を使用するときに罪悪感があったりします。
楽をしている感覚
冷凍食品は工程が省かれるので楽になりますが、そこになんとも言えない罪悪感があります。
手作りしたらこんなに余裕ないのにな、という感覚が悪い方に作用してしまう感じです。
手抜きと思われたくない感覚
さすがに冷凍食品は、形が揃いすぎていることなどもあって、
「冷凍食品である」ことが分かる人には分ってしまいます。
反面、手作りにこだわると、少ないけれど、「これ手間がかかってるでしょ」と言ってくれるお客さんもいます。
こういった部分にやりがいを感じる人はやはり「手作りしたいな」という気持ちを捨てきれない部分があります。
誰でもできる仕事に降格した感覚
冷凍食品を揚げるだけ・・・そういったものを料理というか作業というか。
この辺りは個人の感覚の話になりますが、つまりは料理ではなくて誰にでもできる仕事になり、出来上がりにも誰がやっても味の差などがないというのは、何となくそれ自体を仕事の格が下がったと思ってしまう部分もないではありません。
要するに手作りしたい理由は
- 違いを作り出したい思い
- 単純にプライド
こういった部分になります。
言葉にするとなんとも平凡ですが、これが非常に大きい壁です。
僕は給食に冷凍食品を積極的に導入する派ですが、「全部を冷凍食品やチルド品にしよう」と提案された時にすんなり受け入れるかどうかは微妙なところです。
自分で工夫する、クリエイティブな部分というのはどの仕事でも魅力的な部分です。
それを奪って効率だけを求めるとようになってしまうとどうなるのか・・・
料理する喜び、楽しさみたいな部分は残したいという想いもあります。
「ハンバーグは冷凍でソースは手作りでこだわれば良い」
これはうちの給食関連の会議でたまに耳にする言葉です。
力を入れる部分を限定して、そこに全力投球すれば、違いを作れるのではないか、というもの。
でも、これも理屈は分かるけど難しいところです。
だったらハンバーグの方にこだわりたいし、ソースだけ、となるといずれは「これももう既製品で良いんじゃないか?」となってしまうだろうし。
ただ、毎日決まった時間に食事を提供することが必要な厨房ではこういったこだわりを持っていられない場合も少なくありません。
仮に時間通りに食事を提供できなければ信用問題になりますし、それを「今日は人が少なかったので」などと言ったところで、そんなのは作る側の都合であって、食べる側に影響させてはいけない部分です。
そうなれば、四の五の言わず(言えず)にこういったものに頼らざるを得なくなります。
もしかすると、冷凍品を使うか否かなんていうのは、悩む余裕のある贅沢なことなのかもしれません。
妥協点
多少の余力がある前提になりますが、僕が思う現在の落としどころは
自分が手作りした方が美味しいと思う物は手作り
冷凍食品でも同じくらい、もしくは冷凍食品の方が美味しいものは冷凍を使用
こういったところになります。
ここで区切る理由は簡単で、「食べる人にとってより美味しいものを」
という一点になっています。
他の要素を考慮すればするほどブレてしまうので、現在はこのくらい簡単で良いのだと自分に言い聞かせています。
あまり冷凍に頼ると、そのうち「厨房要らないんはないか」みたいにもなり兼ねないので、頼り過ぎないくらいにしたいとは思っていますが、未来のことは分からないのでどうなるでしょうか・・・