栄養士と調理員の関係を円滑にする方法
栄養士という立場だと、給食現場では年齢や経験を問わずにいきなり責任者などを押し付けられたり、そこまで行かなくても、調理に関わるスタッフを部下のように指示する立場になることが多くあります。
そのため、人間関係の構築については年齢も経験もバラバラのスタッフと上手く人間関係を構築する必要がありますが、これがなかなか困難でもあります。
そこで誰かの役に立てればと思い、自分がこれまでに行ってきた方法で(たまたま)上手くいったものを紹介しようと思います。
全員を平等に扱う
全員を平等(フェア)に扱うというとごくごく当然のことに感じます。
ところがこれを行えている人は少数です。
なぜなら、人間誰しも相性というか「何となく苦手」という人がいるもので、そうなると話していて気楽な人とのコミュニケーションは多いのに、苦手な人とのコミュニケーションは少なくなりがちです。
そういった機微については相手にも伝わりやすく、それは相手にとって
自分は嫌われている・避けられている・必要とされていないのではないか
などなどの疑問になり、仕事に集中できない理由の一つになります。
そして、話しやすい人側も場合によっては
自分は好かれているから特別・優遇されている
こういった態度が現場の空気を悪くしてしまうことにもあります。
こういった理由以外にも様々な理由で平等に扱うことは大事です
例外としては雇用形態に違いがあったり、明らかな給料の差がある場合にはそれに応じた仕事を求めたりするので、態度は平等でも、行ってもらう仕事などは異なるというのはあります。
平等のコツ
気の合う人とは意識しなくても会話などできるものです。
ここで大事なので苦手な人。
苦手な人にこそ栄養士は積極的に話しかけるべきです。
話しかけることで下記の事が分かったり、理解できたりするためです。
- どうして苦手に感じるのか
- その人の考え方や価値観はどのようなものか
- 相手にとって認めているということを伝えて関係を構築する
案外苦手としていた相手も良く知ればなんということはなかったり、難しい人こそ理解すれば向こうも認めてくれたりします。
僕もなんだかんだあちこちの現場を異動してきましたが、最初に苦手だと感じた人の方がその後も顔を合わせれば良くしてくれたりするものです。
僕の好きなサッカーの指導者も「苦手な人から手を付けて認証を与えるべし」と言っています。
ぶっちゃけその人のやり方を真似て行っている部分ですが、個人的にこの方法での成功例も多いので書いておきました。
褒める
人間関係を円滑にするには仕事仲間でなくても褒めることは大事です。
分かりやすいものならその場で褒めるのが最も良いでしょう。
ただ、日本人というのはどうしても褒めるのが苦手だったり
褒めると大げさというかわざとらしさが出てしまったりするものです。
そこで、僕がおすすめする方法は第三者から伝わるようにする方法です。
例えば自分が褒められる立場だとして。
「誰それがぽちおさんの〇〇が凄いって言ってたよ」のように聞かされると、なんとなく二人だけの場で褒められるより嬉しいし、周囲にそれをオープンに言えるってことはお世辞ではないんだなと感じたりします。
褒めるこちらも本人に言うよりも気楽に褒められるし、世間話の延長という感じで周囲に話していずれ本人に伝わるように、の感じで褒めまくるのが良いです。(単発は届かない事が多い)
この第三者を通す方法は、フォローの場面でも使えます。
ミスした人のフォローや周囲とギクシャクしている人をフォローする際にも
周囲に「でも、その人は最近こういうところがんばってるよね」「こういう事ができるようになってきたよね」というやり方。
フォローの場合には本人とも話をしておくのが大事です「いつか届く」では遅い場合もあるからです。
このやり方で、「周りがどう思おうと、僕はその人を一定に評価している」ということを周りにも知ってもらうための方法です。
怒らない
僕は厨房では怒りません(若い頃はこれができなかった・・)
他の栄養士にこれを話すと
怒らないとダメな場面もあるでしょ?
何回言っても分からない時はどうするの?
と聞かれます。
でも、怒らないとダメな場面なんてありません。
怒る以外の伝え方をすれば良いだけで、怒ってしまうのは伝えるための手段(引き出し)が起こる側の人に少ないからです。
何回言っても分からない人への対応も同様ですが、「怒らないとダメな場面(人)というのは怒っても無駄だから他の方法を検討すべし」というのが僕の持論です。
例え怒ったらその場ではできたとして、次もできなくて、また怒鳴る羽目になることが多いし、それでできるようになっても動機としては「怒られるからやる」という恐怖でのマネジメントなので、個人的には嫌いな方法ですし、今のご時世、これらはパワハラと言われるものでもあります。
何回言ってもダメなら都度言うくらいの覚悟で臨むと、いつの間にやらできるようになったりするものです(途中で忘れてしまって教え直しなんてこともよくありますが)
積み重ねという言葉がありますが、僕は薄い半紙を積み重ねる覚悟でやっています。
気長に、気長に。
相談する
栄養士は厨房の決定権を持っていることも多いですが、現場に色々相談するのは大切です。
勝手に決められたと感じる仕事と、自分たちの意見も組み込まれている仕事
どちらに身が入るかは分かりやすいと思います。
あとは単純なことでも相談しておくと、実は栄養士が気づいていなかった問題などが見えてくることもありますし、こちらから相談をどんどん持ち掛けると、現場からも相談しやすくなるので、風通しの良い現場づくりの一環にもなります。
責任はあまり負わせない
調理を行うスタッフに僕が言うのは下記の2種類です。
「献立表は僕が作っているし、味見だって行っているので、何か文句言われたら僕に責任があります」
「美味しいって言われたらそれは〇〇さんのおかげだから、自信を持って『私が作りました!!』ってアピールして」
基本的に悪い事は責任者が責任を負うべきです。
そして成果についてはその成果を上げた人が報われるべきです。
僕の経験上、責任から逃げる上役は信用を失って、仕事も上手く回せない人ばかりでした。
自分で責任を負わないという事は誰かに責任を負わせるということになるからです。
誰かのせいにして逃げる人を良く思う人は基本的にいないでしょう。
あとはパートの方などに必要以上に責任のある仕事をさせがちなのは給食現場にありがちです。
でも、雇用形態や時給などを鑑みてそれが適度でなければ、いずれ辞めてしまうでしょう。
人材難のこの時代、上手くやっていきたいものです。
継続して働いてもらう価値
さて、上に書きましたが、辞めずに働いてもらうというのは重要です。
- 職員減少で各自の仕事の負担が増える
- 教えて来た手間が無となってしまう
- 人を雇う(募集・採用)にもお金がかかる
- 飲食業の深刻な人材難
もはや単純な手間の話だけでもありません。
栄養士はこの辺りまで考えて、スタッフとの関係構築や仕事上の教育などを行っていくのが良いと思います。
最後に
実際にはこれらの方法も臨機応変で、相手によってはアプローチを変えたりする必要はあります。
でも、こういったことを考えながら人と接していけば、いずれは自分なりの方法論は見えてくると思うので、僕の意見はあくまでたたき台くらいに捉えてもらうのが良いのかもしれません。
栄養士はストレスの多い職種です。
少しでも誰かの役に立てれば幸いです。