障害者施設では誤嚥が多い
僕は障害者施設で栄養士をしています。
知的、身体を問わず誤嚥に課題を抱えている人が多く見られます。
ちょっと難しいのは知的障害と一言でまとめている中でも
中学生やそれ以上の知能を持っている人もいれば
いつまでも4~5歳のレベルのままという人も含まれてしまいます。
そうなると知的以外の機能にも差が大きくなるので、知的障害の方に向けた施設と言っても、課題が同じという事はなかったりします。
今回の話では主に重度の知的障害の方が対象となる話になります。
一方の身体障害についても同じで、例えば足に障害を抱えているものの、他には全く問題ないという方も入れば、そうでない人もいます。
僕の施設では知的、身体に障害のある方が多いですが
知的には障害がまったくなく、身体障害だけという方はいなくて、両方の方は大勢います。
そんな中で嚥下(噛む、飲みこむ)という食べる機能に課題を抱える人は障害面意外でも理由があっての課題だったりします。
成長過程での課題
これは以前にもどこかで触れましたが成長との兼ね合いで嚥下に課題を抱えることがあります。
- 成長過程で得るはずだった食べる機能を獲得できなかった
- あるいは赤ちゃんの段階で失うはずの食べ方が残った
この2点の影響で食べることに課題がある場合
途中から改善して良くなるというのは難しいので、食事を食べやすい形態にするという対応を行います。
小さめにカットしたり柔らかくしたり
もっと加工する場合にはミキサーにかけたりという対応まで
今のご本人の機能と食事状況に合わせた形にしていきます。
この場合は歯科医師などの専門職の見解を参考に実施します。
服薬による影響
重度の知的障害のある方はてんかんを抱えているケースが多く抗てんかん薬や
落ち着くための向精神薬も飲んでいる方が少なくありません
こういった薬の多くは覚醒レベルが落ちます。
簡単に言うと日中も眠気がついて回ります。
なかには僕らが飲んだら数日眠り続けるレベルで眠気が襲うものもあるそうです。
そうなると、食事中も意識レベルが低いので、飲み込む際などに変なところに入ってしまうなど
食事の場面がリスキーになります。
こちらは本人の持っている機能と関係なく、覚醒レベルの低下による問題なので、
服薬の調整を医師に相談することで解決していきますが
理由があって飲んでいる薬なので、それをなくすのではなく、どんな薬なら眠気が抑えられるかなど長期に渡って色々と試してみる必要があります。
加齢による衰え
こちらは障害者だからというものではなく、誰にも平等に起こる変化です。
加齢によって
硬いものが食べづらくなる
飲み込みが悪くなる
特に誤嚥性肺炎の原因となる飲み込んだものが胃ではなく、肺に行ってしまう原因は咽頭部の弁の機能の衰えによる部分が大きくあり、高齢者施設での課題としても上位に来ます。
最後に
今回は3点に絞って話を進めてきましたが
食事に対する注意力が落ちるケースなどは覚醒レベルの低下に関わらず起こる方もいるので
食事に集中できる環境や落ち着いて食べる事ができる状況をきちんと整えることは誰にとっても重要になります。
誤嚥性肺炎は高齢者にとっては大きな問題で、発症して今後もそのリスクがあると分かると胃瘻などになってしまい、口から食べるという道が閉ざされてしまう理由にもなります。
今は嚥下トレーニングや嚥下運動(体操)なども動画などでたくさん出ているので、少し興味を持って見ていただければと思います。