知的障害者と入れ歯問題
今回はまったく解決の糸口が見つからない問題について書いていきます。
僕は知的障害の方の施設に栄養士として勤めています。
以前から課題として頭の隅に虫歯や入れ歯の問題はあったのですが、最近はそれらが顕著になっていると思います。
特に薬と医療の進歩によって障害のある方の平均寿命は延びていると感じます。
これは統計として見たことはない(あるのかも不明)のですが、実際施設利用者の平均年齢は高くなっていますし、各施設では70代を超える方もそれなりの人数になっていることから体感としてありますし、実際ご家族の中には「20歳まで生きられない」と言われていたのに・・・(現在50歳)という会話をしたこともあります。
そうなってくると健康な歯の維持なども課題となってくるわけですが、これが難しいです。
自分の意思を伝えることの難しさ
知的障害と言っても簡単に一括りというわけにはいきません。
- 歯や歯茎に違和感があるという状態についてどのくらい理解できるのか
- それを表現できるか
この2つが大きい課題となります。
虫歯については定期的な検診、場合によっては歯茎が腫れたりするので第三者による発見、治療も可能です。
一方で、入れ歯が合うか合わないかという点については最終的に本人の感覚による部分が大きいので、それらを伝えることが難しい以上、「合う入れ歯」にたどり着くということが本当に難しいと感じます。
実際の現場で起こる事
実際に施設で起こっている事に
食事の時間になると入れ歯を外して食事を始める人が多いことに驚きます。
これはいくつかの現場を回った中でも共通して見られたことなので、問題の難しさを痛感させられます。
食べるために入れる入れ歯が、合わない、違和感があるなどの理由で、もっとも重要な場面で取り外されてしまうというのは何とも言えない部分です。
では入れ歯は不要か?
では、合わない入れ歯なのでいらないかというと、そうでもありません。
上の歯と下の歯が合わさるというのは重要です。
食いしばることもできませんし。
発音が悪くなりがちです。
見た目も入れ歯が入っていないとパッと見で分かるくらい変わってしまいます。
そういった意味では食事の際に外してしまうとしても、普段はつけてもらう価値はあるとも言えますが、やはり歯としての機能として「きちんと噛んで食べる」という点についても改善したいところです。
そうは言っても入れ歯には様々な難しさがあり、僕の父親もすでに10年以上入れ歯生活をしていますが、いまだに納得のいくものにはなっていな様子で、会うたびにフガフガと不満を語っています。
それを知的に障害を抱える方に求めるのは難しいというのも理解はできます。
この問題も歯科が進歩することで改善する日が来るのでしょうか?
ただそれまで待つのではなく、改善の手段は探していこうと思いつつも、解決の糸口が見つからないというのが今の職場の現状となっています。