知的障害者は成人後肥満になりやすい傾向

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ウエストを計る男性

知的障害者と肥満の関係性

僕は20年近く知的障害者の通所および入所の施設で働いています。

そんな中で気になるのは肥満の割合

特に学生時代から成人後施設に移行した後に太る方が多いことです、

 

この理由については数年前にも書いた気がしますが、頭の整理整頓を兼ねてもう一度書いていこうと思います。

 

肥満の理由

知的障害者が施設に来ると太ってしまう理由には以下のようなものがあります。

  • 運動量の低下
  • 食事量の増加
  • 生活習慣の変容

 

運動量の低下

僕の働いている施設は日中には何らかの作業などを行っていますが。

知的障害の方が通う施設と言っても千差万別で、理解度や身体状況などもそれぞれ異なります。

 

このため、かなり高度な作業を行って、お給料(工賃と呼んでいるところが多いと思います)を多めに貰っているところもあれば、内職のような仕事を座りっぱなしで行う場合もあります。

 

これまでに僕が見た中で、肉体的に大変そうだったのはクリーニング作業です。

本当にクリーニング工場のような環境で仕事をするので、室内温度は冬でも高く、夏場では汗だくで塩分を含むタブレットなどと水分をこまめに摂取して作業に当たっていました。

 

ただ、そういった大変なグループでさえ、肥満の割合はそれなりになっていました。

この理由としては、学校生活であれば体育の授業などが確保されていて運動量は立ち仕事などよりも多く確保できていたということがあります。

 

さらに学校によっては体を動かすことを何よりも重要視しているところもあり、同じ区内の養護学校では学校の周りを何周も走る姿を見かけるなど、健常者の部活も真っ青な運動量を誇っていたりします。

 

そして、知的障害者施設で行う日中の作業の多くは座り仕事です。

それによって運動量が少なくなってしまうのは仕方のないところです。

 

ただ、健常者であっても、学生時代が終われば肥満傾向の人は増えていきます。

確保できていた運動量は何かしらの努力をしないと維持できなくなり、仕事の忙しさからついつい継続できなくなったりしてしまいます。

そう考えると、運動量低下による肥満は日本の成人全体の課題ということもできます。

 

食事量の増加

僕が献立を作成する際には摂取エネルギーを基準よりも少なめに設定することが多いです。

理由としては上記の運動量の低下もありますが

学生時代よりも基準を上げてしまうことで摂取カロリーを増やすこと自体も肥満の原因になるからです。

運動などで消費するエネルギーは減っていくのに、摂取カロリーは増えるのでは太ってしまうのも仕方のないところです。

 

ただ、一般的には20歳台の摂取カロリーは多めになっていますし、厚生労働省の出す基準では「運動を行うという前提で」摂取カロリーを多めに設定しています。

運動量が少なくなって困っているのに運動したものとしての基準を出されてしまうとその基準量では多すぎるということになるのは当然のことです。

 

あくまで基準は基準でしかないという感じですね。

 

生活習慣の変容 

学生生活から施設での生活に変わることで、生活習慣も変わります。

そうなれば太る可能性と痩せる可能性の両方があるわけですが、太ることの方が多く感じます。

 

理由は家庭ごと、人ごとにそれぞれありますが、学生の頃の生活が整っていればいるほど、そのレベルで新しい生活に移行することが難しく、太ることもあります。

  

後は、自分で買い物ができるレベルの方になると、学生なら制服などを着ているからあまり買い食いをしなかったけれど、私服で通える施設に移ったら帰宅時の買い食いが行われるようになったことで体重が増える、ということもありました。

 

自由度が高まるがゆえに色々な可能性が広がっていきます。 

 

課題はそれぞれ

現在僕は通所施設という、日中だけの施設で働いています。

その前は入所の施設にいたので24時間365日稼働し、食事も3食提供、間食についても把握することができる環境でした。

 

通所の施設から入所の施設に移ってくる肥満や肥満傾向の方の多くは体重が減少しました。

何も特別な食事を提供しているわけではありません。

通所施設に通いながら家での生活をしていた頃に抱えていた課題が入所施設に移ることで解消されるのでこういったことが起こります。

 

こちらの施設に移る前に保護者や関係者の方と話をする機会があるのですが。

その際に「太り気味なので食事は少な目にしてもらえると・・」という内容を言われることが結構ありました。

 

こちらの答えは決まっていて

「生活そのものがガラッと変わるので、まずは皆さんと同じ量と内容で食べていただき、慣れた頃に体重の変化を見ながら、何かあればその時に相談しましょう。」

実際にその後があった記憶はありません。

みんな少しずつ痩せていくので、何も変える必要がなかったからです。

 

課題が解決されれば問題は解消されます。

ただ、普段の生活をしている中では

  • 何が課題か
  • 取り組みは何をしたら良いのか

こういった点が非常に分かりにくいので、解決自体が難しく

入所施設に入るというきっかけで生活がリセットされて整っていくというイメージなので、家でこういった問題を抱えているからと言ってご家族などに悪い所があるというわけではありません。

 

実際、知的障害者の方の太る理由にはここまでに書いた一般論の他に

  • 服薬
  • 筋肉量が健常者よりも少なく
  • 代謝も少ない

こういった、家族だけでは解決できない課題も多くあります。

そういう場合には僕のような施設栄養士にぜひ相談していただきたいと思います。