栄養士としての給食施設厨房体験アレコレ

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ガス台

気が付くと栄養士として20年以上働いていました。

その中では厨房に入ることもそれなりにあり、調理にも関わってきました。

今回は今までの経験で面白かったことや記憶に残っていることを少し書いておこうと思います。

 

最初の現場は武者修行

最初の現場は委託給食会社での社員食堂

結構大きな会社の本社で、ここでは責任者がかなり若手の育成に力を入れている人だったこともあり、かなり後々助かるだけの技術を身に着けることができました。

僕の得意なことに切りものを素早く正確にできるというのがありますが、この辺はすべて最初の現場で叩き込まれたものです。

毎日すごい量の切りものがあったので、身に着けないとやっていけないというのもありましたが・・・

 

記憶に残るのは若い社員で横一列にシンクの前に並ばされて、一斉にキャベツの千切りを切るという仕事

キャベツを何箱分か切るのですが、並ぶことでお互い煽りあう感じになるので、全く気を抜けず、遅かったり千切りが太くなったりすると見守る上司からすぐに叱咤されるという恐ろしいイベント(週に2回くらいある)でした。

 

おかげで今でも脳裏には

「手を切ってレッドキャベツにするなよ!」

「その太さはなんだ、野菜炒めに使うのか!?」

という声がこびりついてます。

 

でも、ヘルプに来た諸先輩方からすると僕は相当恵まれていたようです。

他の現場で働く同期達は最初は米を研いで炊く、あとは雑用という感じで、ほとんど調理に携われていない、まぁ修業期間的な感じがかなりあったようで、いきなりアレコレ作ったりしている僕は現場に恵まれたそうです。

こちらからすると、「米だけやってる方が楽そうだな」

なんて当時は思っていましたが、今となっては感謝の方が大きいですね。

 

大学病院は肌に合わず 

さて、管理栄養士を取ってからとある大学病院で働きました。

こちらは短い期間だけになりましたが、個人的には病院は合わないと感じるところでした。

自分の調理したものを食べる人達を見る機会がほとんどないというのが合わないと感じたところでした。

情報はたくさんありますが、顔が見えない相手に対して良いものを作るというのは思った以上に難しく感じました。

社員食堂では買いに来た人の顔が見えるし、どんな風に食べるのか、何を選ぶのかなど相手の個性が見えるので、相手のことをイメージしながら調理することができますが、病院だと配膳車に乗せるまででひと段落してしまうので、その辺りが見えない。

自分にとって食べる相手が見えるということが大事なんだと気づかされるきっかけになりました。

 

ちなみに栄養相談なら顔を合わせるのですが、考えの古い病院だったので、正しい知識を押し付けて終わりというのが合いませんでした。

糖尿病の方との面談で

「ダメなのは分かっているけどお菓子やめられなくて・・・」

と言われて

「そうですよね~」と同調したら同席していた上司からすごく嫌な顔されました(笑)

糖尿病でお菓子がダメなのは分かるけど「ダメ」だけで我慢できれば誰も困らないわけで、まずは信頼関係を・・というのが現在の定石ですが、そこの病院はあまりにも旧時代のマニュアルの方法論だったので、袂を分かつことになりました。

 

福祉施設で継続して働く

そんなこんなで現在もお世話になっている福祉施設での栄養士業務へ

ここでは最初の現場で色々教わりました。

特にここから8年程度の付き合いになる調理員の方とは阿吽の呼吸と言えるくらいのコンビネーションまで高めることができました。

一例として

「あれ」「これ」で話が通じるということがありました。

忙しいと頭が整理できずに

「あれ取ってって、あれじゃ分からないよね」と言っている相手に「はい「あれ」です」と言って望んでいるものを渡せる。

相手が次に何をしようとしているのかが予想できるからこその芸当と言えます。

ちなみに応用として、相手が何かを言い間違っていたとしても、それを察して正しい意味で理解できるというものもありました。

多分今までの人生で親兄弟よりも分かりあえたのではないかと思います。

 

厨房の仕事の変化

ここからは僕が厨房にいる中で変化として捉えている点になります。

  • 作業量が増えている
  • マンパワーは以前ほど充実させにくい

ほとんどの場面でこの2つに絡んだ課題が見えてきます。

 

水分の用意

まずうちは水分補給用の麦茶を用意するのも厨房の仕事になっているのですが、この準備する量がこの10年で倍くらい多くなりました。

理由としては熱中症があります。

昔は日射病という程度にしか考えられていなくて、今ほど気温も高くなかった。

ところが、ある時期から熱中症はいきなり一般的になり、年間の死者も数人レベルでは収まらないようになりました。

それに対応する手段としての水分補給の重要性が高まるにつれて、用意すべき飲料が増えていきました。

昔の倍用意するということは単純に作業量の増加になります。

たった10分、されど食事を用意するリミットに日々追われている厨房としてはされど10分という感じです。

 

消毒の重要性

ノロウイルスなどの食中毒

新型コロナウイルスなどの感染症

こういったものに対抗するために

食品の衛生状況についてより厳しくなりました。

そして、食堂など食べる場所についても消毒などが必要になりました。

こういった環境整備についても毎日行う必要があり、日々それなりの時間を取られるようになりました。

 

時間にも追われる

厨房というと、お昼時などには戦場と例えられるような忙しさになります。

さらに新型コロナの影響で、食べる部屋も密を避ける為に食事をする人数をバラけさせる工夫をそれぞれ行っています。

うちの法人でもそれは同様で、まとまって食堂に入らないために、食べる場所の分散と共に、食事時間をズラすという対応を始めました。

 

その結果起こったことは食事開始時間の前倒しです。

今までも時間に追われていたのに、これで更に忙しさは加速していきました。

しかも、この苦労が他の職種にはどうにも伝わらない・・

大変になってがんばっても評価されないんです。

 

マンパワーの不足

ここまでに書いたようなアレコレでただでさえ時間に追われる仕事が更に時間に追われるようになったことが分かると思います。

それに追い打ちをかけるようにマンパワーの問題があります。

 

  • 欠員が出ても補充ができない
  • 激務なので定着しない

こんな感じで、安定しない職場となっています。

僕は現在、職員の定着のために仕事量の圧縮などを行っていますがこれがなかなか難しく、余計な部分を切り落とすという作業が日本では「手抜き」と考えられることもあったりするので、何より周囲とのやりとりに四苦八苦しています。

管理者が優秀で理解あればこんなに苦労しないのでしょうが・・・・

 

最後はただの愚痴になってきてしまいましたが、厨房における様々な経験によって厨房そのものの仕組みづくりなどが現在できているという点では、ここまでの厨房での忙しさも報われているとも考えることができます。