青森山田高校のサッカーが強い理由
高校サッカーでは様々な大会で青森山田高校が優勝候補に挙げられることが当然のようになりつつあります。
これって凄いことで、僕が小さい頃は県外からも才能のある選手を集めることで強いチームが作れていましたが、今では競技人口の増加によって才能の溢れる選手はあちこちにいるわけで、強豪校と言えども、県大会でも苦戦するあるいは負けてしまうことも珍しいことではありません。
そんな中、青森山田は県内だけでなく様々な大会で何年にも渡って優勝候補であり、結果も残しています。
この安定感の裏にはどんな考え方があるのかを僕なりに体の成長という面にスポットを当てて考えたものを書いていきます。
なぜ青森山田は強いのか?
では、僕が青森山田高校が強い理由として考えている点を挙げていきます。
- 高校生でピークを迎える選手を見つける仕組み
- 持久力の基礎を作る走り込み
基本的にはこの2点に集約されると思っています。
高校生年代で肉体的なピークを迎える選手を見つけ出す。
そういった選手にも走れる体を作る
この2つがベースにあって、そこで技術的・精神的に優れた部分がある選手が試合に出ている。
だから強い
もちろん青森山田高校の実績によって、才能のある選手が県外からもたくさんくるわけで、元々技術などがある選手で上記の条件を満たしている選手が選手権などの大会に出てくるとも言えます。
高校生でピークになる選手を見つける
個人的に僕は青森山田高校に対して
高校年代の大会で結果を出すスペシャリストだと思っています。
元Jリーガーの那須大亮さんがYoutubeに挙げた動画に青森山田高校とサッカーの試合をしているもの(winners関連)があるのですが、その中で「スタメンは全員ベンチプレス80㎏挙げられる」という話が出て来ます。
僕が高校生の時は80㎏なんて夢のまた夢という感じでした。
ただ、この話は体を作り上げてすごいというだけの話ではないと思っています。
僕がベンチプレスで重たいものを挙げられなかった理由に、非力なこともあったでしょうが、高校生になっても身長が伸び続けていたという理由もあります。
基本的に成長期には重たい負荷のトレーニングはあまり行わないのですが、その理由として
・成長途上の関節に負荷がかかり過ぎてケガをしてしまう
・そもそも栄養が身長を伸ばす方に優先するので筋肉がつかない
この2点があります。
つまり、ケガをするリスクは高く、効果は期待できない
このため、身長が止まってから重たい負荷でのウエイトトレーニングが推奨されています。
つまり、高校年代しかもサッカー部でベンチプレス80㎏を挙げられるということは成長が早い早熟タイプです。(関節や筋肉がすこぶる強い規格外のタイプもいますが本当に例外的ではないでしょうか)
成長が早いということは選手としてのピークを迎えるのも早くなります。
分かりやすい例でいうと
中村憲剛さん、中村俊輔さんという40歳当時でもJリーグでプレーしていた選手は高校年代では身長もまだ伸びていて、体もひょろひょろだという共通の悩みを抱えていました。
これは成長期が来るのが遅かっただけで、そういった選手はピークも遅く、そのため選手生命としては長くなったと言えます。
次は感覚的な話になってしまいますが、海外の選手はU-15などの年代でも大人のような体をしていることが多いです。
年代別の日本代表戦を見ると大人と子供が試合をしているような錯覚を起こすことも少なくありません。
彼らは成長が早く、その分体も早めに仕上げています。
そのため、若くからプロとして活躍するケースも多くあります。
反面、海外では40歳でフィールドプレーヤーとして第一線でプレーしている選手は日本と比べると少ない傾向があります。
もちろん環境の違いやフィジカルコンタクトの頻度や強度も異なるので単純な比較はしきれませんが、成長の早さとピークを迎える年齢は基本的には関連があると思います。
つまり
日本人は成長が海外に比べて遅い傾向がある
そこで高校年代にピークが来る(あるいはピークが近い)選手を持ってくる
そうすることで高校年代におけるフィジカルの優位性を確保することができる
もちろん、他のチームだって走りこんでいます。
でも、こういった部分で他と差を作っていると考えると高校年代で勝つという点においてこれは優れた方法です。
ウエイトトレーニングを行って、しっかり筋肉がつく=成長が早い
ウエイトトレーニングをしても筋肉がつかない=晩成型
トレーニング自体の効果ももちろんありますが、成長の目安としても使えるという感じです。
※筋トレだけではあれだけの筋肉はつかないので、食事についてもきちんと学んでかなりの量を食べるという「食トレ」もしっかり行っていると個人的には予想しています。
持久力の基礎をつくる走り込み
これは松木選手が2年時に地上波のテレビで見た光景で(ミライモンスターとかだった気がする)
「1年生が朝練で1500m走を行い、一定のタイムが出るまでボールを使った練習が許されない」というものでした。
その設定タイムも中学生の全国大会並のタイムが求められていて、高校生と言っても中学3年生と比べれば1歳しか違わないので、かなり過酷そうな風景が映し出されていました。
走りこんでいるチームは数多いでしょうが、ここまで求めているところもそうそうないでしょう。
こうして一定基準以上の体力と走力を身に着けた選手が試合で行うのは、相手陣地の奥深くからプレスをかけるという戦い方です。
バスケットボールでもオールコートのプレスがありますが、サッカーの広いコートでそれを行うわけです。
相手からするとコートのどこでボールを受けても素早くプレスが来るので落ち着いている暇もなく、慌てて蹴ってしまえば、運動量に勝る青森山田にボールを回収されてしまいます・・・
そして、そのプレスをかけてくる青森山田の選手はここまでに書いた通り、筋トレで鍛え上げた鋼の体で向かってくるわけです。
これは相手としてもたまったものではありません。
運動量でなんとかしようというチームはそれなりにありますが
それらと比較して青森山田のプレスは
全員がサボらず、試合全体を通してプレスをかけ続けることができる
正確には相手が落ち着けば追い回さないこともありますが、試合全体でプレスするだけの下地がありつつそうしているという感じです。
前からのプレスは回避されると、チームの重心が前にあるため、ピンチにつながることもあります。
そして、プレス回避される時は
相手がすごく良いプレーでこちらのマークをはがす
こちらの誰かがサボってしまい、そこにボールを淹れられる
このどちらかである場合が多いです。
正直サッカーは相手がいるスポーツであり、運も関わるので、相手がすごい場合には「仕方ない」と割り切るくらいがちょうど良いスポーツです。
そのため、プレスをする時に気を付けるのは全員サボらず、正しくプレスをかけること
それをしっかりと行うことができるのがまさに青森山田の強さを支えている部分だと思います。
このプレスがしっかりしているから良い形で攻撃に移ることができるので、大量得点している試合ほど攻撃はシンプルだったりします。
難点と締めくくり
インターネットやSNSを眺めていると
青森山田アンチとも言える人を見かけることもあります。
そういった人達からすると
これだけ高校サッカーを席巻しているのにプロとして成功している選手が少ない
あるいは
技術のある選手を並べているのにフィジカル頼みのサッカーでつまらない
などの意見が出て来ます。
個人的にはこういった意見も一理あると思います。
ただ、高校生が高校年代の大会で優勝を狙うためにこういった方法を取ることが間違っているとも思いません。
プロを輩出することは素晴らしいことです。
でも、どんな強豪校でも年に数人出せるかどうかで、その割合は200人くらい部員のいるチームでも片手で収まる程度です。
他の選手は大学経由でプロになる人もいますが、そちらも引き続き、あるいは年齢を重ねている分それ以上に狭き門になるので、高校で本気のサッカーはひと段落というケースがほとんどです。
そうなればプロになれるほんの一握り以外の選手は高校年代の大会で優勝を目指すのは当然のことのように思います。
もちろん日本サッカー界全体を見れば優れた人材の輩出は最優先事項ですが、それを高校に押し付けてしまうのも違う部分があります。
正直この問題はその人その人の価値観に左右される部分が大きいので答えは出ないと思います。
ただ、アンチがつくということはそれだけ有名であり、注目される存在ということでもあります。
そしてこういった様々な人達が意見交換をするきっかけにもなります。
何が良い・悪いではなく、何事もにも良い面と悪い面があり、それをどう捉えるのかというところでしょう。
サッカーは流行もスタンダードも変化しやすい競技です。
今後も青森山田高校やその他強豪校を中心に高校サッカーにも注目していきたいと思います。