障害者施設の栄養管理について思う事

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健康管理

障害者施設の栄養管理への疑問点

僕の働いている障害者福祉施設では主に知的に障害のある方が作業をしたり、生活の質を維持・増進するためのリハビリのような活動をしたりして過ごしています。

そういった施設でも一般的に広まる生活習慣病の予防などは重要な課題の一つとなっています。

ただ、知的に障害があり、自分の意見を言うこと・表現する事が困難という方に生活習慣病というものを理解してもらうということには難しい面もあり、本人やご家族の意思を軽んじて職員や周囲で関わる人たちが(善意で)突っ走ってしまうことがあります。

 

個人的にはこういった善意もやり方次第では問題になるものだということを感じています。

 

今現在丁度こういった支援の方法で問題になっているものを一つ抱えているので、少し僕個人の意見を書いていきます。

 

周囲の善意=本人の為とは言い切れない

今回のケースは血糖値が高くなってきていて、医師から「体重を減らすと良いですね」と言われた40代男性(以下Iさん)です。

 

この方は言葉でのコミュニケーションは簡単なものならできるのですが、現状を伝えてもそれを理解できるというわけではありません、

そこで彼の地域生活担当の職員(以下Kさん)から、痩せさせたいので食事はどうすれば良いのか?と僕に直接相談があったのが始まりです。

 

ここでそもそもの大問題が一つ

後でわかったのですが、Iさん本人やご家族から痩せたいという確認を取っていないことが分かりました。

 

担当であるKさんの「健康であることがIさんの為だから」という理屈で、本人をのけ者にしてスタートしてしまいました。

個人的に本人にとって良いはず、という思い込みで何かをするのは福祉もサービス業のひとつですからあるまじきだと考えています。

 

例えば、40代男性の半分程度が生活習慣病予備軍と言われ、そのうちの何割かは会社などで行う検診でも数値が悪くて指摘されたり、医師からも痩せた方が良いなどのアドバイスをもらいます。

 

でも、実際に痩せるための行動変容を行う人はその何割に当たるでしょうか?

1割もいたら大成功でしょう。

そんな健常者と言われ、病気の怖さやどうしてなるのかを知る僕たちでも行うことが難しいのに、障害者施設に通っていてこちらで手を出せるからと言って本人の意向を無視する行為に本当に意味があるのか、これは賛否の分かれるところだと思います。

 

さらに40代男性の何割かは社員食堂のある会社でも働いている人もいるでしょう。

そういった人が太ってきたからと言って、食事を提供する側が「健康の為だ」と勝手に食事を減らしたら、お客からクレームが来るのは明白です。

「何勝手なことしているんだ!」と

相手が障害者だからそれがOKなんて言うのは納得がいきません。

 

そんな行為をあるいち職員の「善意」で本人を無視して行ってしまうことは問題です。

もう一つ酷い例えをしますが、相手が食事について文句を言わない(言えない)から、こちらが気を利かせたという建前で勝手に色々やるというのはペットの健康状態が悪いから食事を変えるという感覚と何が違うのか。

 

健康であることは良い事ですが、良いことだから本人は知らなくて良いというのはやる側の勝手な言い分だと思っています。

 

今回のケースは更に混沌に

このIさんの生活を見ても、特に課題はありませんでした。

  • そもそも食事量が少ない
  • 間食も特にしていない
  • 散歩の習慣がある
  • 服薬は毎食かなりの量になり、小さい頃からそれが続いている

 

正直、食べ物が原因で太っているわけではないので栄養士の出番でもないかな、という感じですが、Kさんは痩せると言えば食事と思い込んでいるようで僕のところに持ってきました。

 

実際痩せるまで食事量を減らすという方法もありますが、元々も十分な食事を摂っていない人にそれ行うと欠乏症状など別の問題が出る可能性もあるので、色々調べてから行う必要があり、情報が少ない中で舵を切るにはリスキーだと判断します。

 

そういった内容の説明をして、「生活や服薬などを見直す必要も踏まえて検討するべき、そもそも生活に課題となる点がないので何をしていくかは話し合う機会が必要」とアドバイスしたのですが(基礎代謝や運動強度、摂取カロリーとのバランスはすべて数字にして示しつつ)、どうやら痩せると言えば食事、という印象は強かったら悪しく、Iさんの生活を支える様々な職種が集まっての会議は催されずにKさんの独断で様々な取り組みが進められていきした。

 

ここで、福祉施設関連の職員あるある

自分が良いと思っていればそれを正規の手順を踏まずに進めてしまう、があります。

本人の正しいを押し通す形ですね。

 

でも、この場合のKさんの正しさはその他大勢から見た場合正しくないに当たります。

実際Kさんの行動が問題視されて今度大規模なIさんのケース会議が行われることになりました。

ここでようやく本来の仕事の進め方に戻せると思います。

 

今回の問題点は

  • 職員一人の思い込みによる行動
  • 本人の意向確認を怠る
  • 痩せる方法は食事を減らすことだけという思い込み

こういったものが絡まり合った結果と言えます。

 

ただ、こういったことは例外ではありますが、まったくないわけではなくて、これまでにも結構な頻度で行われているし、巻き込まれてきました。

その結果今回のように対処する方法を身に付けてしまったわけですが、実際には本人を尊重するやり方さえしていれば起こらないことです。

本人よりも職員の思う正しさを前面に出した瞬間から、その行動は支援でもなんでもないものに成り下がると思います。