特別食や治療食などは事前に基準を決めてから調整

スポンサーリンク
給食

特別食・治療食は事前に基準を決めておく

特別食、治療食など、厨房が行う対応は多くなってきています。

近年では食物アレルギーを持つ方も増えているので、その対応は多岐に渡ります。

 

基本的にはエネルギーや塩分の制限に始まり、食形態(食事の硬さや大きさ)まで、食べる人へのサービスは広まる一方で厨房の負担は増えるばかりとなっています。

 

こういった対応を行う際に、「それぞれの個人に対してベストのオーダーメイド方式」は理想の境地ですが、実際にはそこまで行うには人員と時間に制限がある仕事なので、現実的にまとめていく必要があります。

 

エネルギー制限は何段階、

塩分制限は何段階

食形態は何種類

こういった一定の基準でルールを決めてそれぞれの方がどれに当てはまるのかというようにしていかないと、厨房が回らなくなります。

 

しかも、実際には一人の方でも「エネルギー制限はこの段階、塩分制限はこの段階、食形態はこれ」と複合的にすべての要素が絡み合う方もいますので、最初から手広くやろうとすると痛い目に合います。

 

食事のルールを決める際には、まずは確実にできる範囲で始め、余裕ができたら幅を広げていく方が安全ですし、手を広げ過ぎた結果として時間通りに提供されなかったり、食事の質が落ちてしまったのでは、元も子もありません。 

 

実際この問題を抱えて居る知り合いの職場があるので少しその現場の話を書いていきます。

 

専門家との意見交換も時間をかける

知り合いの現場(僕と同業者の障害者福祉施設)では食事形態がその人に合っているかどうか歯科医師に見てもらうといった対応を行っています。(僕もその現場を見学させてもらったことがあります)

 

実際に食べているところを見てもらい、歯科医師の先生がどんなものが食べにくそうかを見てアドバイスをくれるというもので、取り組み自体は非常に良いものだと感じました。

 

問題はその取り組みを始めて何年も経っているにも関わらず、先生との間にルールが存在していないという点だと感じました。

 

先生は食べている人の様子を見て、細かく

「(A食材名)は柔らかく煮れば刻んだり、ミキサーにかけたりしなくても食べられるけど(B食材名)はソフト食対応しないと難しい」などアドバイスをくれるのですが、実際にその現場の規模や人員を考慮すると、食材ごとの対応は難しくなっていました。

 

結果として、出される食事は、どの食材も全部ソフト食で提供する(低い方の基準に合わせる)という方法を採用していましたが、これでは何のために先生に診てもらっているのか分かりません。先生に失礼でもあると思います。

 

では、どうしたら良かったのか

最初に先生に「うちは食事形態は4段階で考えています」など、明確な基準を提示して、「どの段階に当てはまるのかをご教授いただきたい」という旨を伝えておけば、先生も食材ごとにまで気を使って見ることもなく、全体的に安全と判断できる形態を指示してくれたと思います。

 

この件については他職種と一緒に取り組む仕事についてコミュニケーションの不足が招いたものでもあると思います。

 

実際歯科医の先生が言っていることはベストな内容だと思いますが、「うちではそこまでできない」ということを正直に伝えるべきだったと思います。

 

それを言えずに、実際の食事提供は先生の言ったものと違うのでは、何のために来てもらっているのか分からないですし、専門家の意見を無視(言い方は悪いですが)した食事提供をしていて起った事故については誰が責任を負うのか、現場の栄養士になったとしてもこれでは仕方のないところです。

 

栄養士が医師などと絡んで仕事をする際にはこういったコミュニケーションを直接的・あるいは間接的にでも積極的に行う必要があると感じさせられる一件でした。

エネルギー制限も段階で

エネルギー制限は200㎉くらいで刻んでいるところが多い気がします。

 

こうすることで、「今日はエネルギーいくつの食事が何人分」という把握ができます。

 

ここを完全な個別対応にすると、混乱を起こしてミスを起こしやすくなってしまう上、そこまで細かいエネルギー設定に本当に意味があるのか疑問でもあるので、基準での見方は基本になると思います。

 

塩分も同様ですが、こちらは2gくらいで刻むところが多いと思います。

 

まとめ

個別対応はその重要性を高めているし、それを突き詰めるというサービスや商売は今後も増えていくと思います。

 

ただ、こういったサービスはそれなりにお金をかけて行うものになります。

 

一方で給食施設においては、ある程度の金額に抑えるという事も大切なことになるので、段階的な区別という方法を取りながら、なるべく個人にマッチしたものを出すものの、オーダーメイドではないという落としどころを採用することになります。

 

自分のいる場所や施設がこのどちらの立ち位置にあって、来る人(顧客)のニーズはどうなっているのか(高くてもオーダーメイドか、一定の金額である程度オーダーを聞いてもらえるものか)を把握して仕事に取り組むと良いと思います。