誤嚥性肺炎防止は食形態だけでは不十分 他職種との連係は必須
誤嚥性肺炎とは?
誤嚥性肺炎という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
これは食べ物や唾液、あるいは痰などが本来入るはずではない肺に入り込んでしまう事で肺が炎症を起こしてしまう事に由来する肺炎です。
皆さんも、急いで食べたり、他のことに気を取られながら食事をした結果として、気管に食事が入り込んでむせこんだり、せき込んだりした経験があると思います。
これは肺に向かう気管に食事などが入り込んでしまった際に起る反射行動で、むせたりせき込むという動作は気管から食べ物を戻すために本能的に行われる行為です。
この際のむせこむ、せき込む力が衰えたり、そもそも食べたものが肺に行かないようにする働きが弱まることで誤嚥性肺炎のリスクが高まります。
現在当施設で取り組んでいる対策
僕のいる法人ではこういった誤嚥のリスクがある方(噛む・飲み込む力に課題のある方)に対してソフト食やペースト食での対応を行ってきました。
しかし、その他の部分についてはあまり対応をしている部分がなく、誤嚥=食事の際に起るこという認識で長い間いました。
実際にこの対応で誤嚥性肺炎が起こらないかというとそういうことはありません。
入所という24時間365日こちらで食事提供を行う施設においても毎年数名が誤嚥性肺炎を起こし入院しています。
理由は簡単で、最初に書いたように唾液や痰でも誤嚥は起こります。
これらは当然食事の際だけではなく、常に出るものです。
このため、食事の場面だけを気を付けても防ぐことは困難です。
そこにようやく気付いた僕たちは、どんな部分で注意を行うべきかを少しずつ取り組み始めたので、その内容を簡単に書いていきます。
誤嚥性肺炎防止のため行う取り組み
まだ基本的な取り組みの話しかできていないのでお恥ずかしいですが、どのような内容で誤嚥性肺炎を減らそうとしているのか具体的に挙げていきます。
口腔ケアの徹底と歯科医連携
食事の場面でどんなに気を付けていても、食べたものが歯の間に挟まったままであれば、いずれ本人が意識できないタイミングで喉に落ちてきます。
こういった不意のタイミングで喉に何か入ることは誤嚥の原因になりますし、食べ残しは長時間そのままになっていると雑菌も繁殖しているため、免疫の低下している方などは非常にリスキーなものになります。
食べた後にしっかりと歯磨きなどの口腔ケアをすることで、食べ物由来の誤嚥性肺炎を減らしていきます。
歯のかみ合わせの悪さや入れ歯の不具合は食べ物が挟まりやすくなることから誤嚥性肺炎になりやすいだけでなく、虫歯や歯周病の原因にもなるため、歯科医との連係を行い、噛むことがきちんとできるようにしていきます。
本人の能力的には噛めるのに、歯がしっかりしていないために噛めていないというケースも少なくないため、実は歯をしっかりと治せば誤嚥が防げるということもあります。
特に入れ歯は合わないとすぐに外したくなってしまいますが、入れ歯を外した状態は口をしっかり閉じることが困難であり、口を開けたまま何かを飲み込むことは飲み込む力がしっかりしていないと難しいことから、唾液や痰の誤嚥につながります。(試しに口を開けたまま唾を飲み込んでみると分かりやすいです)
実はすでに歯科医師に食事の場面を診てもらい、どういった食事が合っているかは確認してもらっていたのですが、食事場面だけのものになっていました・・・今考えると非常に勿体ない話です。
服薬調整の必要性
実は飲んでいる薬の影響もあります。
てんかんの薬や精神関連の薬は眠気を誘発するものが少なくありません。
覚醒状態が落ちて、意識がはっきりしない状態で食事をすれば、しっかり噛むこと、飲み込むことが困難なのは当然のことです。
特に僕の今いる施設ではてんかんの薬やリスパダール(リスペリドン)などが眠気につながったり過剰な鎮静効果を発揮した結果として、飲み込みに影響を出しそうだと判断しています。
誤嚥性肺炎を起こした経験のある方については主治医にその旨を伝えながら、服薬について調整が可能かどうかを確認するなどを取り入れていくことで、覚醒状態を維持しながら薬の恩恵は受けられるというバランスを整えていきます。
リハビリ(運動)の必要性
これは障害者施設では難しい所ではありますが、ストローを使用した簡単な運動などを行うことで、飲み込む力を維持していこうという運動が可能であれば取り入れたいという形です。
STさん、OTさんなどの指導を受けながら少しずつできることを増やしていきたいと考えています。
まとめ
今回の内容は僕のいる法人において
- 食事だけでは解決できない誤嚥性肺炎に全体としてどう関わっていくか?
- 具体的にどんな点にリスクがあるのか、それに対しどう取り組むか
この2点を詰める作業の中で出てきたものです。
細かく言えばもっとやりたいこと・やるべきことはあるのですが、最初から高すぎる理想を掲げてしまうと、急にあちこちの職種への負担が増えてしまい、結局いつもまにか無かったことになってしまうので、まずはこのくらいから・・・という感じです。
また何か動きがあったらお知らせしたいと思います。
最後になりますが
最近様々な医師が誤嚥性肺炎について情報の発信などを積極的に行ってくれています。
栄養士もそれらにアンテナを張ってどんどん誤嚥性肺炎の予防・治療について良くなっていくと良いですね。