給食にコンセプトが必要な理由
献立作りは栄養士の仕事としてメジャーなものですが、時代の流れと共にこういった栄養士業務の柱である献立作成自体が苦手であったり、やたら食材費をかけてしまったり、地味な献立が続いて他職種からクレームが来てしまったりと、トラブルの原因となるようになってきてしまいました。
このため、今年度は法人内で食事のコンセプトなどを統一して価値観を揃えていこうという話を進めています。
現在のコンセプト
実は現在全くコンセプトがないわけではなく、10年以上前に決めたものがあります.
それは「安全で美味しい食事を提供する」というものです。
昔はこれでもそれぞれの栄養士が連携して仕事をしていたので、それぞれの意図が何となくくみ取れていました。
現在は、連携して仕事を行う機会も少なくなってしまったことから、施設の献立に様々な面で格差が生まれるようになってきています。
なぜかというとコンセプトがあまりにも抽象的だからです.
安全な食事を提供するためにどうするのか?
自分たちの考える美味しい食事とはどんな定義なのか?
この点がそれぞれに任されている時点でいずれ統一感が無くなるのは仕方のない所だったと、今更ながら反省しています。
特に複数名が異なる施設で献立を作成する場合には最低限イメージの付くコンセプトを決めておくことは大事です。
具体的なコンセプトの例
では、具体的な表現にはどんなものがあるでしょうか?
安全についてのコンセプト
安全という事であれば、食中毒を起こさないという前提はもちろんですが、もうすこし踏み込んで考えたいところです。
- 食べる際の食堂などの環境は安全か?
- 食事形態はどうやって本人に合ったものを提供し安全を確保するか?
- 魚は骨の無いものを使用するのか?
厨房調理において安全とは衛生だけでなく、安全に食べられる料理の提供という意味になります。
ここを施設ごとなどそれぞれの特徴をイメージしながら埋めていきます。
美味しいのコンセプトとは?
では、美味しいについてはどう考えるでしょうか?
僕は集団給食なので、レストランとは少し違う価値観を持っています。
そんな中でコンセプトになりそうなのは以下のようなものになります。
- 味つけのブレを少なくするため合わせ調味料の使用を行うか?もっと良いものを求めて手作りにこだわるのか
- 冷凍やカット済み野菜は使うのか使わないのか?
- 取引先は定期的に見直すことでより良い商品を扱っている業者を探す
味付けに関しては、レストランなどでは、より良いものを追求しますが。集団給食などではアベレージとしてある程度のレベルを維持したいという面の方が大きいです。
これは調理一筋の人が求人を出しても来てくれないという事情もあります。
このため、一定以下の質のものを低下するよりは誰が作っても一定の品質が保証される合わせ調味料や既製品の使用も行っていった方が、ハズレの日が無くなり結果的な評判は高くなる傾向があります。
そういった手間のかからないものをどの程度使用するのかを共有するために、冷凍品やカット品などをどのように取り入れるかまで事前に検討してコンセプトに落とし込んでおきます。
美味しさが維持できるのであれば積極的に使用するのも良し、手作りにこだわるのも良し、最終的には人員や時間との兼ね合いになりますが、こういったところもある程度ルール化しておかないと。「あそこの厨房は冷凍品ばかりで手を抜いている」など厨房同士で罵りあいになったりします。(食べる側は気にしないことが多い)
コンセプトは献立の作りやすさだけでなく、価値観の共有の為にも重要です。
本当は献立を統一する方が良いのでしょうが、うちはせっかく各施設に栄養士がいるので、そこまではしたくないという葛藤があったりします(いずれは統一するでしょうが)
そして、既製品などを使うのであれば、より美味しい商品を扱っている業者を使うという作業を継続的に行っていくことも必要になります。
合わせ調味料や冷凍品は厨房でかかる手間暇が変わらなくても、そのものが美味しければ最終的にも美味しくなります。
こういったところを具体的に仕事として明記することで、法人内での動きも取りやすくなります。
コンセプトは自分の仕事の範囲を明確にするというツールにもなります。
まとめ
最後になりますがコンセプトの最も大事な働きは栄養士が献立で悩んだ時に、「このコンセプトに沿って考えるとこうなるな」と、基準としての働きをすることです。
規準が無いと意外と悩まされるところがあったりするものです。
基準がしっかりすることで悩む場面が減り、仕事がスムーズになります。
最初にコンセプトを作るところに手間がかかりますが、長期的に見れば自分たちの仕事をスムーズにしながら、自分たちを守ってくれるツールになるはずです。