サッカーの進歩と正しい生活
一昔前のサッカー選手は、テクニックとセンスがあれば、忙しく走り回る必要はないという考え方もありました。
Jリーグ開幕当初の選手達が集まって座談会を行う番組を以前見ましたが、やはり習慣的に飲酒や喫煙があったということを話していました。
これは日本に限った話ではありません。
ただ、これらの話にしても、才能に胡坐をかいてサボっていたというわけではなくて、昔はポジションごとに仕事が専門的に区切られていたということがあります。
例えば、
センターバックはあくまで相手のセンターフォワードを抑えることだけが仕事
天才と呼ばれる選手は守備をしなくても良くて、得点に絡むことが仕事
ポジションチェンジという概念もありませんでしたし、もっとシンプルなスポーツとして存在していました。
このため、1試合で個人が走る距離は今よりも短く、スプリントする機会も少なかったことから、持久力や瞬発力が今のサッカーほど求められていませんでした。
ところが、現代サッカーではポジションの専門性を残しつつ、それだけでは不十分になっています。
守備の選手も得点に絡みますし、パスも上手くないと試合に出ることすらできません。
フォワードの選手も得点以外の貢献を求められるようになりました。
こういった、様々な仕事への貢献を行うに当たって、圧倒的に持久力と瞬発力の要求値が高まりました。
これが、食事や睡眠の質を高め、ストイックに協議能力を高める必要性が生まれた理由の一つです。
次の試合までの回復に食事や睡眠が必要
もう一つは、サッカーの試合数が増えたことがあります。
サッカーは日本だけでなく、様々な国でも盛んに行われています。
このため、国内の試合の他にもアジアでの試合もあり、代表に選ばれたりすれば更に試合数は増えていきます。
サッカーでインテンシティの高いゲームを行えば体は疲労しますし、(小さな)ケガも負います。
こういった状態から、体をしっかりと休めて次の試合に備えることの重要性も高まりました。
この回復を促すために正しい生活習慣が必要になったというイメージです。
ヨーロッパのプロサッカー選手に見る回復の重要性
ヨーロッパのトップクラブでは、この回復についてかなり重要視しています。
これはいくつかのカップ戦がリーグ戦と並行して行われる時期には、中2日で試合をすることなどもあるためです。
こういった厳しい戦いを勝ち抜くために様々なノウハウを持っています。
食事に関する意識
試合後にはロッカールームなどで炭水化物、果物を摂取します。
試合後に選手が立ち寄るロッカールームやゲスト(VIP)ルームに炭水化物や果物を置いて、試合後すぐに摂取することを推奨しています。
試合で消費したエネルギーやビタミンを素早く摂取することで体の回復を高めることが分かっているためです。
ラグビーW杯などではハーフタイム時のロッカールームにも果物など並べている国もありました。
回復と食べることはそれだけ密接に関わっていて強豪と言われるチームほど、そこに対するこだわりが強い傾向があります。
休憩に関する意識
休むという言葉は日本ではいまだにややネガティブに捉えられてしまいがちです。
ところがヨーロッパなどでは、むしろ練習が体の休息(回復)目的で行われることすらあります。
試合の次の日、完全休養となりがちですが、実は軽い運動を行った方が体の回復が早いことが分かっています、
このため、試合の次の日に軽い練習を行い、その次の日を完全オフにすることすらあります。
この意識の違いは上記の試合日程の厳しさも影響しています。
日本では練習というと、「更に上手くなるためのもの」と考えがちですが。
実際には、上手くなったり、身体能力を高めるための練習をする時期と、次の試合までに調子を整えるための練習とする時期に分かれる必要があります。
試合の集中する時期にハードなトレーニングを控え、試合の少ない、あるいは無い時期に厳しいトレーニングをするなど。
特にプロでは勝つことが目的になるので、練習で頑張って試合の時に疲れてるのでは話になりません。
試合に万全で挑むために練習は整える程度になることも多くあります。
また、高いレベルの試合をしっかりと行う方が上達も速くなります。
試合に完璧に状態を合わせることは上手くなるためにも重要と言えます。
最近では、厳しいトレーニングを行う日でも90分程度で練習を区切るチームがヨーロッパでは増えてきています。
サッカーは基本的に1試合90分なので、その時間を最高のパフォーマンスが出せるようになれば良いわけです。
ダラダラいつまでも走ることができる能力よりもしっかりと90分を走り切れる体を作るという点でも合理的ですし、長時間の練習は疲労の蓄積と共に集中力の低下も招きます。
これらは練習の質を下げるだけでなく、余計なケガにもつながるものなので、すべての面から非常に理にかなった方法だと言えます。
ただし、相手との差が大きい場合や、もっともっと上達する必要性がある場合などは、練習量で補うしかないことなどもあるので、唯一にして絶対の方法ではないことも頭に入れておく必要があります。
おまけ
ちなみに試合前日に緊張して眠れない、試合後に興奮して眠れないということはプロ生活の長い選手でもあることだそうです。
そんな時におすすめなのはプールで軽く泳ぐことだそうです。
熱を持った筋肉を冷やし、気持ちをリラックスさせ、適度に疲労もするので非常に効果的で、眠りにも入りやすくなるのだということです。
音楽も流さずにリラックスして泳ぐことが最適です。
ただし、負けた日や自分がミスした日はどんなに頑張っても眠れないこともあるということです。
人間ですからね(笑)