施設栄養士のつぶやき 食物アレルギーにはどこまで対応するか?

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小麦アレルギー記号

食物アレルギーにはどこまで対応するか?

幼稚園・保育園・小学校くらいまでが顕著ですが、食物アレルギーの対応が必要な方は以前に比べるとだいぶ増えてきています。

そんな中、小学校ではアレルギー対応を除去以外行わず、それを望まない場合にはお弁当の持ち込みをお願いするようなことにもなってきています。

これはすべてに対応しようとすると厨房の負荷が高くなりすぎてしまう事への対応の一つでもあります。

厨房の負荷が上がると、忙しくなりすぎてしまうため、人為的なミスの起こる確率が高くなってしまいます。

結果として本来食べてはいけない食物が提供されてしまい、大きな事故を起こしてしまうということが、毎年小学校の給食現場で起こったための苦肉の策とも言えます。

 

このように、厨房の作業量が適正を超えてしまった際に起る事故として、アレルギー食品の提供は異物混入と同等かそれ以上に重大なもので、そばなど、アレルギー症状が重篤なものについては命に関わります。(実際に小学校でそばを食べてしまい亡くなった事故もありました)

学校給食は管轄が文部科学省なので、実はその他多くの施設とはルールが異なっています。

僕の働く福祉施設も大量調理現場として厚生労働省の管轄になるのですが、正直対応としては文部科学省の方が先を言っていると言わざるを得ません。

今回はそんな中で、僕の職場がアレルギーに対してどう対応しているか現在まさに悩んでいる状況を書いていきます。

 

本当にアレルギーなのか?

昨年4月に僕は今の現場に異動してきました。

そこにも2~3名のアレルギーという方がいました。

でも、施設としてその方が本当にアレルギーなのか把握しているケースは1つも有りませんでした・・・

他の施設でも良くあることなのですが

ご家庭ではアレルギーだと主張している場合に、実は医師の診断は全く受けたことが無いということが多いです。

その理由として以下のようなものがあります。

 

診断のないアレルギー判断1:昔かゆみや発疹が出た

小さい頃その食品を食べた日にかゆみや発疹が出たので、それ以降二度と食べないようにしている、というケース。

単に体調が悪かった、別の原因でかゆみや発疹が出ていた場合でも、思い込みによって食べていないことも多いです。

特に幼児期の食物アレルギーは一定の年齢に達する頃には消失している場合もあります。

きちんと医師の診断を受けることで、本人の生活の幅を広げることができますし、調理する家族が献立を考える際の負担も軽減されるので、やはり診察・検査は受けて欲しい所です。

 

診断の無いアレルギー判断2:嫌いな食材をアレルギーと言い張る

「アレルギーと言っておけば食べさせられることが無いだろう」という打算でアレルギーだと発言しているケースもあります。

この場合は大体どこかに矛盾があるので案外こちらは分かっていたりします。

「〇〇の料理に入っているのはダメだけど、この料理の場合はOK」など、都合の良い部分がある場合が多くあります。

 

アレルギー診断を強制するべきか?

では、施設などに入所する際にアレルギー検査を強制するべきか?

これについても職場内で意見が分かれています。

 

この理由としては、

現存のアレルギー情報の真偽は判断できるというメリットがあるものの。

知らなかったアレルギーの発見も相当数ある事が予想されます。

それに対応しきれるのか、あるいは強制的に検査をしてもらっておきながら対応しないという選択肢が許されるのかという部分が主な問題点です。

もう一つの問題点として、アレルギー検査の結果はレベル等が表示される形式の物が多いですが、医師によって「気にするべき」という基準が一定しなかったりする部分もあります。

そして、ご家族も少しでもアレルギーの反応があれば何らかの対応をしてもらいたいと思うのは当然のところです。

医師の診断と家族の想いの相違が出る事が予想される、その場合はどうするのか?

こういったルール作りが難航しています。

 

アレルギー診断を受けるメリット

では、施設側の都合ではなく、本人と家族にとってアレルギー検査を受けるメリットはあるのでしょうか?

個人的にはあると思っています。

先にも書きましたが、アレルギーだと思っていたのに、実は違うのであれば、その食品に警戒する必要がなくなりますし、料理選択の幅も広がります。

人生を豊かにする可能性があるわけです。

 

一方、アレルギーという自覚のないアレルギーが発見されることも有ります。

この場合は、長らく原因不明だった体調不良の犯人が見つかったということもあります。

その食品を食べなくなってからすこぶる調子が良いということもあります。

そんなことあるの?と思われる方もいると思いますが

花粉症を例にとると分かりやすくなります。

花粉症は僕もそうでしたが、なかなか本人としては認めたくないもので、毎年スギの季節に鼻水が出ても「これは風邪だ!」と言い張って乗り切ります。

このように症状が重篤でない場合には、それをアレルギーだと自覚しにくい部分が存在しています。

何となくだるい日がある、という方の中には前日に食べたものの影響が遅れて出る地帯性アレルギーと呼ばれるものも最近話題になりました。

自分の体を知る事で、毎日が今より快適に過ごせる可能性があるので、アレルギー検査は有用だと考えています。

一方で、本人が気にするほどと思っていない検査に一定以上の金額をかけて検査をすることにはやはり抵抗のある場合も多いです。

 

現場で起こりやすいアレルギー関係の事故

調理現場ではどんな場合にアレルギーの事故が起こりやすいのでしょうか?

 

現場で起こるアレルギー事故1:アレルゲンが多数含まれる献立

例えばそばアレルギーの方と、その方とは別に甲殻類アレルギーの方がいる場合で、「てんぷらそば」が献立だとすると

そばアレルギー対応としてうどんにしたり、ごはんにしたりします。

そして甲殻類アレルギーの方は海老てんぷらが使えないので別の食材にしたりするわけですが、これが増えていくと頭がこんがらがってしまうので、誰かの分を忘れてしまったり、Aさんの分とBさんの分を取り違えてしまったりと、自己の確率がグッと高まります。

 

現場で起こるアレルギー事故2:混入

小麦粉アレルギーの方が増えてきました。

勿論アレルギーのある方の分は厨房の別スペースで調理を行いますが、小麦粉は粉の粒が小さいので空気中を飛んでいきます。

厨房も限りあるスペースなので、別のところでアレルギー食を調理していると言ってもこういったものについてゼロにすることは非常に困難です。

この現象は、小麦粉を使用していないお菓子などのパッケージに

「小麦粉を扱う商品と同じ工場で生産しています」などの注意書きにも反映されています。

本当に敏感で少量でも体調に異変が起こる人は避けてくださいという意味です。

工場のように厳正な規格を設けている場所でもこのような注意書きが必要なので、厨房という時間と場所の制限のある場所での困難さは分かっていただける点もあると思います。

 

食物アレルギーにはどこまで対応するか まとめ

この様にアレルギーについては対応したい、という想いがある反面、それによるリスクを食べる人に背負わせてしまうということになることも避けたいという二律背反的な悩みを抱えています。

対応が増えるほど、リスクも高まるのでは対応すること自体がサービスの向上になっていません。

厨房としてどう考えるか、というレベルではなく、企業や法人格の理念というレベルにつながる部分ではないかと思います。