栄養士のいる施設に通う以上、健康的である義務がある?
栄養士のいる施設では、太っている人などに、こちらからアプローチして、体型改善のプログラムを提供する場合があります。
食事のカロリーを調整して、運動量を増やして・・
ただ、こういった取り組みについては栄養士がいる施設だからという体面を無意識ながら気にし過ぎている職員の存在による過剰なサービスという背景もあります。
今回はこのジレンマについて書いていきます。
栄養士のいる施設では計算された食事が提供されている
栄養士は施設を利用されている人の情報に基づいて献立を作成しています。
このため、施設の食事だけをしている場合には基本的に太ることは少ないです。
たまに、消化吸収のやたら良い人や、特別体型の小さい人が施設基準の食事量では本人に多くなってしまい太ることも有りますが、そういった場合には分量調整を行っている場合が多くなります。
つまり、特別な理由や原因がなければ栄養士の提供する食事で健康を害したり、健康を害するような体型になることはほとんどないわけです。
僕個人はここまでで栄養士の仕事はほとんど達成できていると思っています。
栄養士の提供する食事以外の課題への取り組み
ここから先は僕個人としては過剰だと考えているサービスになります。
例えば、
①食事は管理されていても間食は自由である場合の間食への取り組み
②運動量が少ないからと運動処方を行う
③昼食のみ提供している場合に家庭での朝食と夕食への介入
こういった行動について、提供する施設と栄養士側からすればサービスとして良いことをしているつもりなのでしょうが、提供される側からすれば、「そこまで口を出すのか」ということも少なくありません。
こういった場合の問題点として、相手もこちらが善意で行っていることは分かっているため、口では「ありがたい」という旨の発言をすることです。
でも、実際にありがたがっているかどうかは、こちらの提供した情報通りの改善を行ってくれているかで良く分かります。
そして、僕の経験上、9割の方はその後も健康状態や体重について改善が起こりません。
結果が伴わないという事は、改善して欲しい内容について取り組めていないという事ですから、こちらの良かれと思って行った行動は受け入れられなかったという事にもなります。
過剰なサービスが適正なサービスに変わる瞬間
では、こういった健康へのアプローチはやるだけ無駄な行動なのでしょうか?
僕はタイミングこそがすべてで、相手がこちらの言葉に耳を傾ける姿勢になっていれば、そのサービスに意味が出ると考えています。
つまり、向こう側から相談されたタイミングで相談に応じれば、悩んでいる・ニーズが発生しているのだからこちらのアドバイスに耳を傾けてくれますし、何かしらの処方が欲しいという状況なので、情報などを提供すべきタイミングということになります。
押し売りから、必要とされているサービスの提供に切り替わる瞬間ですね。
正義感溢れる栄養士程、あちらが求めないうちから正しさの押し売りを始めてしまい、むしろ相手との距離感を遠ざけてしまうことが良くあります。
実際に僕は押し売りを辞めて怠け出してからの方がご家族から頼られることが増えました。
うるさい栄養士から、欲しいタイミングで欲しい情報をくれる栄養士にご家族のイメージが変わったからだと思います。
栄養士に正しくない食事の相談をするというのは案外勇気がいる
栄養士に食事の相談をする行為は勇気がひつようです。
自分の食事を自分で否定するような行為だからです。
栄養士から言われる内容についてもポジティブなものは少ないこともあります。
注意されるだろう、作るのが難しい、あるいは食べる本人の望んないような食生活を求められるだろうな・・・
必要なのは正しさではなくて、その家族に寄り添う姿勢とできる範囲で求めて行くこと。
こういった不安を完全に取り除いた対応ができれば、おのずと相談される回数は増えていきます。
理想的な食事とは何とも味気なく、つまらないもの(個人的な意見)です。
そんなものを押し付けるのでない形を探していくことが大切です。
栄養士がいる職場で許される不可思議な行為
僕が施設を利用している人が太ってきたと相談を受ける際に気になる点として。
では、その職場の人間は全員健康的な理想体重を維持しているのですか?
血液検査で何の問題もないのですか?という事。
もちろん太っている職員はどこにもいるし、血液検査では体質などもあって、全て問題なしでいる人もそんなに多くは無いでしょう。
それでありながら、施設を利用する人には、そういった「理想的かつ健康的であること」が望まれています。
うちの法人では、職員も栄養士が立てた献立を食べています。
でも、健康的でないなんて人もそれなりにいます。
太っている職員が、「Aさんが最近太ってきたんで、何とかしたいです」と相談に来た時にどんな顔をしたら良いのかはいまだに分かりません・・・・誰か教えて・・・
本当に必要なのは栄養よりも医療的所見
・太ってきたのでなんらかの対応が必要ではないか
・血液検査で指摘されたので何らかの対応が必要なのではないか
こういった場合に施設は、「自分達はそれに沿った行動をしている」というアリバイ作りの為に食事量を減らすなどの対応を行いがちです。
でも、急に太った、あるいは血液検査で指摘項目があった、という場合に本当に必要なのは通院を行い、何らかの病気であるかどうかの診断を受ける事です。
その中で食事にも気をつけなければいけない場合には医師からそういった指示がでます。
そこで初めて食事に手を加えることになるのですが、どういうわけか施設は自己判断だけで食事に手を加えようとしてしまいます。
健康診断目的はスクリーニングであり、そこで引っかかった人は通院するのは当然のながれというかそれこそが健康診断の目的であるはずなのに、施設がその枠を無視してしまう現状は案外多くのところで見受けられます。
おかしいな、と思ったら栄養士じゃなく医師。
ここははっきりさせておかないと、大きな病気が隠れていたのに、見落として食事だけなんとなくカロリーを調整していたという事になりかねませんし、その責任を栄養士は取る事ができません。
今後こういった問題は訴訟などのリスクにもつながっていくものになっていくので、施設としても遵守したいところですし、栄養士としては自己防衛の面からもしっかりとやるべきことをしてから食事対応に移る必要があります。
栄養士のいる施設では健康的でなければいけないか まとめ
健康ブームから、食事などに気を付けていれば健康になれるのではないかという幻想が広まってしまった部分があるように思っています。
食事は薬ではないので、何かを治すということはできません。
せめて薬や治療法の効果が出やすい環境を整えるくらいが良い所ですし、食事の目的は予防に尽きます。
何かあった時に食事で辻褄を合わせようという時には、大体食事で何とかなる状態を過ぎているので、通院などに早めに気持ちを切り替える必要があります。