施設や学校で食べる昼食だけを減らしても体重は減らない
施設で栄養士をしていると
「最近太ってきたので、施設で出す昼食を減らして欲しい」という希望を出されることがあります。
これはご家族からであったり、支援職員が良かれと思って働きかけたりというものです。
ですが、実は施設での昼食を減らしても体重は減少しません。
はっきり言い切る理由として、これまでの数十年、うちの各施設ではこういった希望に沿って食事提供の量を調整していた施設がいくつかありますが、いずれも結果が伴わなかった、あるいは更に太ったという実績を目の当たりにしているためです。
昼食を減らしても痩せない理由
では、昼食を減らすことで摂取カロリーは少しは減っているはずなのにどうして痩せないのでしょうか?
更に、昼食を減らすことで起こるデメリットもあります。
この辺りについて紹介していきます。
昼食を減らしても痩せない理由1:原因は昼食ではない
基本的にある程度の規模の施設や学校で提供される昼食は栄養士が献立作成を行っているので、破格のカロリーになるということはありません、
栄養のバランスも考慮されているので、そもそも施設や学校で食べる食事が肥満の原因になることはありません。
問題の無い部分をいくらがんばっても、成果が出ないのは当然と言えます。
昼食を減らしても痩せない理由2:根本的な問題点が解決しない
理由1で、肥満の原因は昼食ではないと書きました。
つまり、他の食事内容や間食が肥満の原因になりますが、これらを解決しない限りは他をいくらがんばっても問題点は放置されたままになるため、解決には至りません。
昼食を減らしても痩せない理由3:実は気休めな事を依頼者も気がついている
特に保護者からの依頼である場合
「家では厳しくできないので、施設の食事で何とかなればありがたい・・・」という希望的観測で頼んでくることが多いです。
更に言うと、問題点についても気が付いている方が多く、そこが解決できないけど何とかしてもらえないかという藁にもすがるという感じです。
勿論成果は出ないのですが、それでも「何かしら手を打っている」という関係者の精神安定のための業務になってしまう部分も多くあります。
ここまでは昼食を減らしても痩せない理由を理屈っぽく書いてきましたが、基本的には栄養士がカロリー計算を行っているという一番信頼度の高い食事に手を入れたところで、そもそもそこは肥満の問題点ではない、ということになります。
そして、栄養士が計算している食事を減らすことでのデメリットも発生します。
昼食を減らすデメリット1:午後のエネルギー不足
施設や学校では朝食後、昼食まで何も食べず、その後も帰宅時間になるまでは何も束ないことが基本になります。
そこで、朝食以降となる食事の昼を減らしてしまうと、その後のエネルギー不足に繋がりやすくなります。
そうなると午後の集中力の低下などにつながってしまうので、作業・学習効率は低下してしまいます。
昼食を減らすデメリット2:夕飯まで我慢できず間食が増える
昼食が少なければ夕方にはお腹が空きます。
夕飯までには時間がある場合が多いので、こうなると自然と間食が増える傾向があります。
せっかく昼食を減らした分については、この間食で帳消し、あるいは間食は高カロリーのものがおおいので、むしろ摂取カロリーが増えてしまうという結果に繋がります。
栄養計算された食事を減らした結果、栄養のない間食でエネルギーだけを補ってしまうというのは、言葉は悪いですが愚策と言えるでしょう。
特に間食がそもそもの肥満の原因である場合、昼食を減らした結果が更なる体重の増大につながるケースも少なくありません。
更にこの場合の問題点は、間食が増えたのは夕方お腹が空くからだと気が付いて、昼食を元の量に戻したところで、習慣となった間食の量は元には戻りづらいということがあります。
良かれと思って簡単に計算された食事を減らしてしまうことは、こういったリスクと隣り合わせであることを認識する必要があります。
その他の昼食を減らす問題点
食事を減らすことによって他にも様々な問題が発生することがありますが、その一例を紹介
障害者施設にいると分かるのですが、暴れた時、声出しを始めた時に食べ物をあげてその場を収めるという家族もいます。
このため、どうしても間食が増えてしまう・・・ということもあります。この方法自体を否定するつもりは実は僕にはありません。
子どもと言っても成人していて、親は高齢になって・・・力や声掛けでは収まらないという場合もあります。
そのため方法自体は否定しませんが、こういった暴れる、大きな声を出すという際には、何らかのストレスを本人が感じていることが多く、空腹もその一つとなります。
昼食を減らすという行為は、このリスクを招く可能性もあります。
この場合も、場を収めるために更に間食が増えてしまいます。
施設だけでなく、自宅での生活もある方に関しては「施設以外での変化」についても考慮する必要があります。
3食管理される施設ではどうなるか
僕は今の施設に来る前は3食を提供する入所施設で仕事していました。
そこでは、入所した方はどんどん標準体重に近づいていきました。
特に変わった食事の提供を行ったわけはありません。
みんな同じ内容でも、大体太っている人は痩せて、痩せている人は体重が増えます。
つまりは、課題のある生活をしていなければ、人間は比較的標準的な体形になりやすいということでもあります。
(ちなみに夜勤のある職員の多くはどんどん間食が増えて太っていきます・・・)
肥満も他の問題と同様に、課題を見つけ出して、その課題についてどう取り組んでいくのかという事が大切になります。
減らしやすいからと施設や学校の昼食に手を付けて「やった感」だけを得ても、それは本人のためになっていないことがほとんどです。
昼食を減らしても体重は減らない まとめ
今回はタイトルに苦労しました。
今でもしっくり来ていないので、今後変更するかもしれません。
そのくらい、この問題は何とも言いづらい側面を持っています。
周囲も良かれと思って対応をするわけです。
でも、結果的にそれが本人の抱える問題をかいけつする方向に行かない
そうはいっても、何らかの対応はしているから少し安心
本人を中心にした対応をしていれば、こうならないと思いますが、そうならない現実もこういった部分に集約されます。
本人に寄り添う支援というものであれば、体重=食事だけにならず、食事を変更することで及ぶその他の変化についても考えるくらいの施設でありたいものです。