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国の健康に対するアプローチが現実と乖離
厚生労働省は健康維持のためには運動が重要なので、運動量を十分に確保すること、それに見合った多めのカロリー摂取を行う事を最近の方向性として定めています。
確かにそれは理想的ですが、現実的にそれが困難であるからこそ肥満や生活習慣病が国レベルの問題になっている、ということを書いていきます。
現代人の肥満の理由
現代では肥満や生活習慣病が問題になっています。
以前はそこまで問題にならなかった肥満や生活習慣病が増えてきた背景としてはどんなものがあるでしょうか?
現代人の肥満の理由1:運動不足
現代人の運動量は少なくなっている
これは以前にも記事にしました。
運動しなくなったというよりも、生活自体がエレベーターやエスカレーターが普及したことで階段を使う機会が激減したように、日常生活に溶け込んでいた、「無意識のうちの運動」が失われていったということが実際にイメージに近いです。
家電も便利になって、より動かなくても生活できるようになってきています。
運動量が減少しているので、消費カロリーも減少しています。
摂取カロリーが変わらなくても消費カロリーが減っていけば不要なカロリーが脂肪になって行くため、太りやすくなります。
現代人の肥満の理由2:摂取カロリーの増加
和食は洋食に比べるとヘルシーと言われますが、これは高カロリーのバターや生クリームの使用が少ないためです。
和食では料理のコクよりも旨味で食べますが、洋食ではコクがあることが美味しさにつながるので、こういった高カロリーの乳製品などを多く利用します。
そして、食の多様化が起こり、食卓には様々な料理が並びます。
このため、和食中心であった頃よりも摂取カロリーは増えていきます。
更に美味しいデザートやお菓子も増えたので、余分な間食もついつい増えていきます。
こうして運動量の減ったところに摂取カロリーは増えて行くことで肥満になりやすい環境が現代には整っています。
現実から乖離する国の考え方
現実との乖離1:運動の推奨
厚生労働省が健康のために運動をしましょうという方向で動いています。
これは便利になって動く量が減った分を運動で補いましょうというものです。
一見すると正論のように思えます。
でも、人間が便利を求めるのは「楽をしたいから」です。
楽をした分どこかで苦労しなさいというのは、便利にする意味自体を無にする部分があるので、実は矛盾したことを掲げているという事に注目です。
現実との乖離2:摂取カロリーの増加
運動をすることを前提に、摂取カロリーは以前の基準より多めにしています。
これは申し訳ないけれど、正直「は?」というのが個人的な感じ方です。
現実
運動量の低下+摂取カロリーの増加=肥満や生活習慣病
これに困っているわけです。
これを
運動量を増加+摂取カロリーも増加=健康的
こうしろと言っているのですが
実際に国民全体に向けるアイデアであるならば
運動量の低下→それに見合った摂取エネルギーへの見直し=健康的
この辺りが妥当ではないかと思います。
運動量を増やすという最も解決しづらい問題を解決する前提で摂取カロリーを増やしなさいというのは乱暴な考え方だと思いますし、達成も困難であることをなぜ思いつかなかったのかと思います。
今後も世界は便利な方へ向かっていきます。
通常の生活で消費するカロリーは減る一方です。
つまり、特別に時間と労力をかけて運動をしないといけない
これならば、摂取カロリー自体を運動量が少なくても健康的に生きていける現代版に切り替える方が現実的だし、一般的な達成の難易度は下がると思います。
国の考える健康へのアプローチへのフォロー
では、国はどうしてこんな方向性に物を考えているのかというと
様々な論文などから
運動習慣が健康につながることが見えてきています。
このため、「運動」というものを非常に大切に考えていることが分かります。
※一方でそれが難しいから肥満や生活習慣病が増えているとも言えます
そして、穿った見方をすると、
摂取カロリーや栄養素を見直して必要量を下げてしまうと、食事の量自体が少なくなって、食事にかけるお金が少なくなって経済が冷え込む、そして、食品製造を行っている業界に打撃が来る
こういった部分への配慮が国民の健康以上に重要視されてしまっていると見る事もできます。
食べる量は減らすな、むしろ増やせ
その分は運動しろ
横暴な言い方をしてしまうとこんな感じ
もちろん基準の数字を算定するに当たっては専門の栄養士も参加していますが、何というか、理想を追いかけて現実的な達成しやすさがどこかへ行ってしまっている気がします。
健康のために運動を行う方法
実は健康志向の高まりと共に運動を習慣とする人は増えてきています。
これは非常に素晴らしいことです。
一方で、運動量の確保についてはこういった個人の努力でしか解決方法がないという事もできます。
一応自治体などでウォーキングのイベントを行ったりしている所、努力をしている地域もありますが、それに参加するだけのエネルギーのある人は参加しますが、本来参加して欲しい「運動習慣の乏しい人」をターゲットとしているものは全然ないと言っても過言ではないでしょう。
努力を前面に押し出さない運動方法が重要
個人的にこの「本来運動が最も必要な層」を引っ張り出せたものはポケモンGO以外見たことがありません。
こういった部分をもっと広げていく工夫などは国レベルで行っても良いと思うのですが、まぁやらないでしょうね。
ゲームが健康へのアプローチになるという話は少し皮肉が効いていて面白いと個人的には思うのですが。
こういった、個人的な趣味の部分に運動を溶け込ませることが解決法と言えます。
僕は趣味でフットサルをしています。
これは運動をするという感覚よりも「フットサルを楽しむこと」が目的で付加価値的に運動がついてきます。
ポケモンGOも、目的の場所まで移動するのに歩くことが必要になるので付加価値として運動がついてきます。
このように楽しみを達成するための手段として運動が入ってくるように趣味を設けることが大切です。
ダイエットのように楽しさが含まれないと、ただ苦しい物になってしまいます。
楽しいことの目的達成が重要です。
スポーツを趣味にすることは手っ取り早い方法です。
筋トレが趣味として認められにくい背景には、一般の方から見ると「楽しさ」が伝わりにくく、「苦しさ」は理解できることから、なぜ続けることができるんだ?という面にあり、筋トレしている人と価値観が異なるので、この辺りの歩みよりは今後も難しいでしょう。
国の健康に対するアプローチが現実と乖離している問題まとめ
①運動量が少なくて生きて行ける時代に運動を増やせという難題
②運動量を増やす前提で設定のカロリーは多めという崩壊した前提
①が達成困難であるのに②が①を達成した前提のルールになっているという矛盾
今回はこの部分について書いていきました。
実際僕の施設では、障害者施設であり、障害者向けの栄養基準はないと厚生労働省から返答をもらっているので、設定カロリーなどは生活に則したものを採用しています。
全然国の方向性と違う数字です(笑)
でも、保健所の方とヒアリングをしても、そこについて異論を出されたことはありません。
みんな思う所あるんじゃないですかね?
もちろん今回の内容で僕の言っていることが全てではありません。
国の言っていることが全て達成できるのであれば、それは当然僕の言っていることよりも100倍優れた方法です。
でも、栄養士や栄養について考える人であれば、こういった疑問を常に持ったり
決められた基準についても自分なりの解釈や考え方を持っているべきだと思ったので、「考える」きっかけになればと思って書いてみました。