プレイヤーズファーストとは
個人的にプレイヤーズファーストという言葉をしっかり学びなおそうとしたところ、しっかりと定義を記載している物が見当たりませんでした。
今回はこのプレイヤーズファーストを個人的に噛み砕いていきます。
育成年代や指導の場で使用されることが多い
特に育成年代と言われる少年・少女スポーツからプロ入り前の世代に対して使用されることが多いこの言葉。
実はすべてのプレイヤーが対象なのですが、プロの選手ともなると大人として扱われることから、ある程度自分の身を守ることができる(でもパワハラなど根深い問題もありますが)ことから、主に若い世代に使われがちです。
特に近年真夏の暑さが尋常ではない屋外で、日中に試合が行われる、しかも日に数試合をこなすことがある現状について「プレイヤーズファーストの概念が守られていない」と言われます。
プレイヤーズファーストとは?
きちんとした定義は探してみましたが見つかりませんでした。
基本的には選手にきちんとプレーしてもらうために環境を整え、周囲が協力的であることを表します。
選手とその将来を守るためルールです。
指導の場では、主に昔の体育会系、精神論と対極にある考えとして使用されることが多い言葉です。
僕のプレーヤーズファーストの解釈
次の3点が主に意識する点になると思います。
①選手の身の安全を確保する(メンタル・健康・怪我・病気の予防)
②選手がプレーしやすい環境を整える(場所・時間・天候)
③選手が自身のアイディアを発揮できるようにする(説教・怒鳴るなど行わない)
この3つはそれぞれ関わり合うので、完全に分けることは困難であり、以下の説明はまとめてしまいます。
選手の身の安全の確保は当然のように思われますが、これが当然のように守られていない現状があります。
プレイヤーズファーストは守られていない
例えば、学校の部活動で休みは週に1回、毎日の練習は5時間以上
当然のように行われていますが、あまりに長時間の運動になると体力・集中力共に低下するので、当然プレー中の怪我のリスクは向上します。
疲労も蓄積するので、体は疲れた状態でスキルを身につけます。
それらはフレッシュな状態で身につけるものとは異なってきます。
これらは考えてみれば当然のことなのに、なぜか守られていません。
練習は2時間以内に抑えて後は遊びの範疇で・・・というのであれば話は別ですが。
そして、特に真夏の日中、屋外で行うスポーツについては更に熱中症のリスクも考える必要があるのですが、
・他の部活との兼ね合いで昼間しか使えない
・暑い時にがんばった方が体力がつきそう(指導者の指導力不足)
・夏休みに大体大きな大会があって、暑さ対策の為
この様な理由でいまだに普通に行われています。
これを見ると
グラウンド使用の都合
指導者の都合
大会運営の都合
プレイヤーの都合は二の次三の次となっていることが分かります。
プレイヤーズファーストの守られていない例
真夏のサッカーインターハイ
甲子園(高校野球)
この辺りは、非常に伝統的であり、選手を大切にしていない大会です。
ただ、選手もその伝統を重く受け止めている、診る側の僕たちもそれをありがたがってしまっているという現状もあり、プレイヤーズファーストが入り込むにはまだまだ時間がかかりそうです。
サッカーのインターハイでは
準決勝から決勝までの空き時間が24時間あれば良い方で、なんらかの都合で試合が長引いたりすると更に短くなります。
特に真夏は突然の雷雨による試合中断などもあります。
このため決勝で求められる能力は
「短時間での回復力」
これってサッカーの本質ではないですよね。
プロになれば連日の試合なんてありえないのに、子ども(青年ですが)では行ってしまう。
日本のサッカーを強くするためにみんながんばっているはずなんですけどね。
いつの間にか本来の目的ではないところがクローズアップされてしまう。
そして甲子園
これはピッチャーの酷使がだいぶ前から課題とされていました。
更に最近は真夏の甲子園は35℃を超える気温になることも多く、野手を含めて足をつるなど、今後の運営について課題と思われるシーンが増えてきています。
でも改善はされません。
ピッチャーに関してはエース一人で勝ち抜くチームもありますが、プロのスカウトは「早めに負けるように祈っている」ということです。
勝つためにはその選手に投げ続けてもらわなければいけないのでしょうが、そこで無理をして肩やひじを痛めてプロへの道を閉ざされる選手もいるわけです。
この場合の難しい点は、選手本人も勝ちたいので、「肩が壊れても良いので投げさせて欲しい」と懇願してしまう点です。
高校球児にとって甲子園とはプロになるための通過点ではなく、ひとつのゴールとなっている部分も否定できません。
本人の意志であればプレイヤーズファーストの考えが満たされているかと言うと、僕はそうは思いません。
ここで、トレーナーや監督が「これ以上は投げさせられない」と判断して止める、これが選手の体を守るトレーナーの仕事であり、説得することが指導者である監督の仕事ではないでしょうか?
もちろん勝った方が学校にメリットがあるし、監督の評価も上がるのでしょうが、そうなるとプレイヤーがやはり二の次になってきていることに気が付きます。
たとえ負けても「選手は投げると言ったが、自分が止めた。だから負けたのは監督の責任」と言い切れる監督が僕は最高にカッコいいと思います。
怒らない指導もプレイヤーズファースト
昔はサッカーでも野球でも
①「前へ出ろ!」
②「今なんで○○しなかったんだ!」
という怒号が監督やコーチから出ていました。
今でもやっているチームもありますけど・・・・
これについては本人が認知・判断・決定するプロセスを奪ってしまうので、行わないようになってきています。
①のように今すべき行動を指導者が先回りしてしまうと、本人は自分で考えずに、指導者の言うとおりにしか動けない選手になってしまいます。
②では、本人の判断を否定しているので、次に判断をする場面が来た時に悩んだり、考えなくなったり、怒られないようにだけプレーするようになるなどの弊害が出やすくなります。
本人にどんどん判断させて、それを実行した後に、良い判断であればそれを伝え、失敗したら他にも選択肢があったことを示してあげる。
これだけで本来は十分ということです。
プレイヤーズファースト=人を育てること
ここまで見て
「子育てに似ている」
「職場の人材育成に似ている」
と感じた方もいるかと思います。
まさにその通りで、選手として成長するという事は人として成長することに似ています。
元日本代表監督のイビチャ・オシムさんも「サッカーで人を育てることができる」といっていました。
そう考えれば、無理をして途中で体を壊す行為がいかに避けるべきものなのかは見えてくるのではないでしょうか?
プレイヤーズファースト まとめ
痛みに堪えてがんばる姿、過酷な環境に耐える鵜方などは確かに美談にしやすいし、僕らもそんな姿に心を打たれたりします。
でもそれがプロではない選手だったら?
彼らは自分の体や将来を犠牲にして僕らを楽しませるエンターテイナーではありません。
そこにギャランティーすら発生していないのです。
むしろ何かしらの代償を支払う可能性すらある。
若い可能性を潰さないためのルール
それがプレイヤーズファーストと言えると思います。