なぜ痛みがあっても我慢して運動してしまうのか
痛みを堪えてまで運動をするのにはもちろんいくつかの理由があります。
①他の人から遅れを取りたくないという心理面
②動かさないと技術が鈍ってしまうという強迫観念
③休むことが次の試合に出られないことを意味するチーム環境
こういった点が主なところとなります。
少し昔ながらの考え方ではありますが、特にクラブや部活動では今でもこういった考え方をしているプレーヤー、指導者が多くいます。
無理をしやすい環境が日本の運動文化に根付いているという印象です。
痛みがあるのに無理をして運動をするデメリット
怪我していても無理をすることのデメリットはなんでしょうか?
※ちなみにサッカー選手が突き指をして・・・など、動かす箇所とあまりにも関係性のないものは除外して考えています。
①痛みを感じる際には無意識み合理的、良いパフォーマンスを行うための動きよりも、痛みを感じないフォームを優先してしまうことで、良いフォームを崩してしまう。
②痛みを感じない無理なフォームなどを繰り返すことで、今まであまり負荷をかけていなかった部分に強い負荷がかかるようになってしまい、違う箇所を怪我してしまう。
俗に言う庇う動きによる他の部位の損傷を招きやすいという感じです。
③①②より体の使い方が根本的に変わってしまうので、今まで身につけた技術を十分に発揮できない。
④どんなに庇ったり、使わないようにしても、その競技をしている中で怪我をした部位についてはまったく負担のかからないようにはできないので、怪我が治りにくい、または慢性化しやすい。
こういった理由から、怪我をして無理をして運動するよりも、しっかり治す方が大切なことが見えてきます。
痛みが引くまでのリハビリ時には精神的なケアの必要性も
怪我をしているのに無理をする理由は精神(メンタル)的な不安感であるのに対し、無理をした時の代償は体(フィジカル)に跳ね返ってくるので、落ち着いて怪我を治すことのできる精神状態を作り出すことがポイントです。
軽い捻挫であっても、2~3日休んでいる間に、ポジションを争うライバルに、自分の立ち位置を奪われてしまうかもしれない。
こういった場面でスポーツは残酷な面もあります。
ただ、怪我を悪化させたり、長引かせることでその環境が良くなることはないので、怪我をしている中で何ができるのかという面を考えていくことが大切です。
メジャーリーグで活躍しているダルビッシュ選手は右ひじを手術して、投球練習(キャッチボール)の許可が医師から出るまでの間に、肉体改造を行いました。
そして復帰後も活躍をしています。
ピッチャーが長期間投げることができないというのは精神的にかなりの負担だと思います。
ところがダルビッシュ投手は、その間にできることを考え、更にパワーアップして復帰することをSNSで発信し、その目標を達成しています。
超一流の選手はやはり精神的にも強いということでしょう。
精神的な強さはすぐに身につけることはできませんが、怪我をしている間には、その部位に負担をかけない方法で、他の部分を磨くことに充てるという方法は非常に参考になります。
足を怪我したのであれば上半身を、上半身のどこかを痛めたのであれば、下半身を鍛えても良いですし、プールなど持久力を高めるメニューを行ったり、ヨガを始めとした柔軟性を高める方法を取り入れたり。
怪我をしなければそちらを見ることがなかった、というものに取り組む時間が与えられたと考えると、精神的な負担も少なくなります。
怪我をした後の方が良くなることもある
上記のように、怪我をしたことで始めた新しい取り組みのおかげで、プレーヤーとしての幅を広げて復帰してくることも少なくありません。
人間はどうしても得意なプレーなどを中心に組み立てて、苦手なことは集中的に取り組まなければ避けてしまうがちです。
怪我をしている時期をこの弱点克服に上手くあてられると、復帰後に前よりもよりプレーヤーになることも可能です。
元々90点のプレーを95点に上げることは困難ですが、
元が20点のプレーを25点に上げることはそこまで困難ではありません。
そして、怪我の功名と言う言葉がありますが、上記の弱点克服以外にも、日本のクラブ、部活動は休みが少なすぎる傾向があるので、蓄積した疲労が抜けて、フレッシュな状態に戻ることも手伝い、怪我明けの方が良いプレーができることも多くあります。
痛みと休養 まとめ
日本では、怪我をして休むことをいまだに怠けて捉えるようなこともあります。
実際には、プロを目指すのであれば、ある程度厳しい所を乗り越えないといけない部分もありますが、その代償として何人のプレーヤーが途中で挫折するようになったかも考えないといけない時代になってきていると思います。
特に若いうちには変なフォームなどを身につけてしまい将来の伸び幅を縮めてしまう、怪我をしやすい身体になってしまう事にもつながりかねないので、本人の「怪我をしているけどやりたい!」という気持ちにブレーキをかけるくらいの指導者や専門家がいた方が安心です。
プロになってしまえば痛み止めを打ちながらプレーすることも来年以降の契約やサラリーを考慮して必要かもしれませんが、それはそのスポーツ自体が生きる術になっているからこそで、彼らも現役引退後にはその代償を支払うことになることもあります。
実際に毎試合痛み止めの注射を何本も打っている海外のトップ選手の中には引退後にまともに歩ける保障ができないと言われている人もいます。
どうしても痛みを堪えてプレーすることが美談になってしまう背景はありますが、その代償まで考えて、本人・周囲が正確に判断して欲しいところです。