栄養士の働く施設給食ではどこまでの個別対応を行うべきか?

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食事個別対応

栄養士の働く施設給食における食事の個別対応

施設と書いていますが、栄養士の働く職場の多くで食事の個別対応は必要性の高いものになっています。

個別対応食の行われるそれぞれの施設

・保育園
・小・中学校
・福祉施設
・病院

学食や社員食堂についてはメニューの選択の幅が大きいことから、本人がメニューを選択することで食べられない食材の回避が簡単&食事形態についても健康体の方の利用が多くの場合で前提になっているので、こういった対応はほとんど見られません。

個別対応にはどんな種類があるのか

一口に食事の個別対応と言っても、それ内容は非常に多岐に渡ります。
大きく分けても以下のように分かれていきます。

①アレルギー対応
②食事形態
③宗教的・文化的背景
④服薬との関連
⑤その他

それぞれを簡単に説明していきましょう。

個別対応の種類① アレルギー対応

保育園や学校では、最近は食事について何らかのアレルギーを持っている子どもの増加から、対応が増えてきています。

アレルギーのある食事は完全に除去し、栄養バランスを考慮した上で代わりの食品を提供する場合もあります。

※小学校給食は文部科学省の管轄で、ルールとしてはアレルギー対応は除去まで、代替は提供しないという事になっています。

個別対応の種類② 食事形態

に福祉施設では、健康でなかったり、体の機能が正常に働かない人の割合が増えることから、食事形態に配慮の必要な方が多くなります。

食事形態とは
・食材の大きさに工夫
・食材にとろみをつける
・ミキサーでペーストにする
・ゼリー状、あるいはムース状に形成する
こういった対応を表しています。

これらは噛む能力、飲み込む能力を合わせた本人の食事摂取能力に合わせての対応となり、基本的には歯科医や理学療法士など専門家の診断を元に実施されます。

この理由として、
・施設職員で統一した見解を得る事が困難であること
・施設側の食べさせ易さだけで判断され、能力に見合った食事摂取が提供されない
こういった点があります。

実際に昔あった話では
老人施設で、ミキサーを使用したペースト食は噛まなくても飲み込めることから、食事時間が短くなり、職員としては食事介助が楽になるという完全な職員の都合で多くの方がまだまだ噛む能力があったにも拘らず、ペースト状の食事をさせられていたという事がありました。

食事を噛む習慣がなくなれば、人は噛むための筋肉を委縮させ、顎が小さくなり、噛むことができない体になっていきます。

人間らしい生活を施設職員の都合で奪ってしまったという歴史から、専門家の診断を取り入れていく傾向に変わってきています(まだまだ徹底されていない)

個別対応の種類③ 宗教上・文化的背景

これは今後増えて行く未来の課題となります。
日本で暮らす外国籍の方も増えてきました。
多種多様な文化への対応も必要になってきます。

豚肉を食べることを禁じている宗教の方もいれば、ラマダンでは、施設にいる時間に食事を禁じられるタイミングもあります。
そういった事情は本人の都合と簡単には片付けられない部分であり、これらへの対応についても今後はマニュアルが必要になるかもしれません。

個別対応の種類④ 服薬との関連

有名な所では、血圧を下げる薬や抗てんかん薬はグレープフルーツと一緒に摂取しないようにとされています。
血栓防止剤は納豆との組み合わせを回避する必要があります。

このように
・薬の効果を薄めてしまう
・薬の効果を強めてしまう
薬が出される際には、狙った効果があるので、必要な分の効果が得られない、あるいは必要以上の効果が体に害を及ぼすという組み合わせについては避ける必要があります。

障害者福祉では、抗てんかん剤を使用している方が非常に多いので、グレープフルーツ事態を献立に入れないところもそれなりにあります。

個別対応の種類⑤ その他

うちの施設では、牛乳でお腹を壊してしまう人にも対応を行っています。
ただ、これらについては絶対のものではないので行っていない施設も多いのではないかと思います。

このように個別の対応には施設や会社・法人によって異なることが少なくありません。

施設ごとに抱える個別対応の課題

単純に個別対応と言っても、上記のようにオーソドックスなものでも数種類あり、更に細かく様々な対応を迫られる場合もあります。

僕の知る限りで対応が困難だったケースとしては以下の2点があります。

対応困難なケース1:細かすぎる個別対応の指示

食材を細かく切ると丸のみしてしまい窒息のリスクがある、でも大きすぎても噛む能力が追い付かないので食べられない、葉物は噛み切れないので・・・と、病院から食材事の注文が来たケース

作る方も対応が多すぎると混乱してしまいます。
基本的には個別対応は幅が広がるほど人的ミスが出やすくなります。
かといって間違ってしまうと命の危険もあるので、毎食非常に緊張感が強く、厨房内が疲弊してしまうこともありました。

対応困難なケース2:非常に多くのアレルギーを持つ

病院に勤務していた際、大豆・肉・魚・卵にアレルギーのある子どもが入院してきました。
主なたんぱく源が使用できないので、たんぱく質の量を確保するための代替食に非常に苦心しました。

最近ではたんぱく質摂取を減らすための食材は種類も増えていますが、たんぱく源を含まない高たんぱく食品はさすがに見当たらないので苦労した記憶は今でも残っています。

エネルギー自体も確保が大変で、家族に普段の食事の様子や、どんな食材を利用しているか聞き取りしながら対応を行いました。

個別対応の今後について

個別対応の幅は広がるばかりです。

一方で厨房のスタッフを大幅に増員することは現実的ではなく、個別対応の広がりは現在のところ厨房の負担増加の一途を辿っています。

実際に完全オーダーメイドと言えるレベルの方もそれぞれの施設で抱えている場合も多く、その対応は非常に多岐に渡っています。

今後、施設などで行われていくことの中には

・自分の施設が一体どこまで対応するのかを明確にすること

があります。
一件対応の幅を決めてしまう事が冷たいようにも感じますが、自分の施設で対応の幅を超えている人を無理やり見てお互いに取ってリスクを抱えるよりも、本人に合った施設を探す為の一つの指標としてあるべきだと思います。

そして、施設としてどこまでを見て行くのか
当然すべての施設が医師や看護師を雇って、医療処置ができるというわけではありません。
そんな施設で胃ろうの方を受け入れることで、感染症などのリスクを本人に追わせてしまう現状が果たして良いと言えるのか、日本の各施設と厨房に関わる人達は考えるタイミングになっていると思います。

本人が希望を出せる場合には、機能に見合った食事よりも、人として口から形のあるものを食べたいという希望が出ることは少なくありません。
その際のガイドラインなども、安全性以外に必要なのではないかとも思います。