施設給食の課題 その個別対応は本人のためか、職員のためか?

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給食の個別対応

施設給食の課題 食事の個別対応が本人のためになっていないことがある

学校なども含む様々な施設では、通常の他に病気の状態に合わせた食事、アレルギー食、薬との飲み合わせで避けなければいけない食品があるなど、個別の対応が行われるものがあります。

本来はしっかりとした根拠に基づいて提供されていなければいけませんが、そおの根拠がいつの間にかぼやけたり行方不明になることもあります。

今回はこの個別対応の食事についての疑問を書いていきます。

個別対応食は医学的根拠に基づいて行われるべき

分かりやすい個別対応食としては、糖尿病の方のエネルギー制限があります。

こういった病状に合わせた食事については医師からの指示に基づいて施設で計算された食事を提供します。

塩分制限なども同様です。

 

アレルギーについても本来は血液検査などを行ったうえでアレルギー食品とどの程度摂取が可能か(あるいは不可能か)を医師に確認することで本人の安全な食事につなげることができます。

ミキサー食のように食材の形を変えることについても歯科医師などの専門家の診断に基づいて行わないと、安全のためと思いきや、実は本人に合っていないものを提供してしまっていて、危険なことになっていることもあります。

 

このように医学的な根拠があり、それらを施設側に提出してもらうことで

・その個別対応の正当性

・職員が変わった時にも正確な情報が引き継がれる

・健康問題が起こった際に正しい対応がされていたという証明

こういった点を満たすことができます。

 

これができていない場合には

根拠のない対応を行っていて起きた事故と言われても反論できません

しっかりと根拠を揃えて置くことは喫食者の健康を守るだけでなく、何かあった時に自分たちを守るものにもなります。

何か起きた際の責任の所在はこれからどんな仕事にもついて回ることなので、昔のようにお互いの信頼関係だけで行うことは非常にリスクの高い行為となります。

 

過剰な個別対応を行うリスク

過剰な個別対応とはどんなものを指すのかというと

  • 医師の診断がない食事内容の変更
  • 専門家の診断がない食事形態の変更

この2点が主なところになります。

 

過剰な個別対応 ①医師の診断がない食事内容の変更

ありがちなのは、

・最近太ってきたので食事量を減らしてほしい

・最近痩せてきたので食事を増やしてほしい

この2つです。

確かにただ体重をコントロールするだけであれば、摂取カロリーを変えていけば可能です。

ただ、太ってきた・痩せてきた原因は何か?

これがはっきりしないのに食事で体重だけ上下させて喜ぶのは施設としての健康管理上疑問があります。

その背景に何らかの疾病の可能性があるためです。

 

つまりは最近太ってきた、痩せてきたことが気になったら、まず通院

・何らかの病気ではないか?

・血液検査などから食事をどうコントロールするべきか?

この2点がはっきりすることで食事の変更内容が明確になるわけで、それらがないまま体重という指標だけで動いてしまうのであれば、施設には医師も看護師も栄養士も要らなくなってしまいますし、食事の安全性も不確実なままになってしまいます。

病気の可能性があるのか? 単純な肥満なのか? そうではないのか? この違いは非常に大きなものです。

 

こういった問題は何も特殊な施設に限った話ではあません。

社員食堂などでよくある会話で、「今回の検診(健診)の数字がすごく悪かったから、ごはんを減らしている」など聞かれますが、すごく悪い場合には通院を促す通知が来ているはずです。

でも、なぜか人は食事で何とかしようとしてしまいます。

まずは医師に診断してもらい、自分がどのような状態か、食事の制限は必要かを確認することが最優先なのは変わらないのですが、どうにも通院に結びつかない・・・

施設でも、このように医師を飛ばして勝手な診断を本来診断する資格のない職種の人間がしてしまうことで、医学的な根拠のない食事が提供されてしまっているところは意外な程多くあります。

そもそもは、「気を遣ってやってあげている」だったのでしょうが、それらは医師の診断がない限りは過剰なサービス、あるいは不必要な可能性のあるサービスです。

 

食事形態の個別対応についてはもっと深刻

食事形態についてはもっと難しい部分です。

噛むこと、飲み込むこと、舌はどの程度自由に動かすことができるのか、自前の歯は何本残っているのか、姿勢の維持はどうか・・・・

非常に多くの事柄が複雑に絡み合っているので、専門家でも意見が割れることも少なくありません。

その中で本人にとって安全と思われるもの、施設としてどこまで対応できるかを相談しながら組み立てていきます。

一時期高齢者施設で問題になったのですが、まだまだ自分で噛んで食べることができる方にもミキサー食のように噛まなくて良い食事にどんどん切り替えてしまったということがありました。

これは本人の安全性向上という建前を振りかざしながら、実は職員が介助が楽だからという背景があったことがのちに分かっています。

このように過剰なサービスには大体どこか歪な理由があるものです。

 

おかしな対応の防止には企業や法人全体での取り組みが必要

僕の職場では今年度から、しっかりと相互で資料を確認しながら的確な個別対応が行われているのかをチェックする取り組みを始めています。

 

難しいのは栄養士が勝手判断で食事をいじることは少なくて、多職種や親御さんからの希望で仕方なく、対応を行っているというケースが多いということです。

ご家族から「太ってきたので食事を減らしてほしい」と言われれば無下に断るわけにもいかないので実施するなど。

こういった問題に栄養士個人が立ち向かってしまうと個人的な悪者になってしまうので、「会社や法人のルールとしてそれはできないことになっている」という後ろ盾は必要です。

もしくはそういった希望を聞き入れる際にも何らかの書式を作成し、記入してもらうことも大切です。

 

ただ、ダイエット目的や体重増加を目的とする際にも

「期限」「目標の数字」この両方を定めておく必要があります。

ここをないがしろにすると。食事量少ないけれどいつから行っているの分からないまま何十年も形骸化して実施されていたなんてことにもなりかねません(恥ずかしながら実際あった話)

ある程度摂取カロリーを落としても痩せない場合などは期限を区切って通院を進めるなど、医療につなげるための布石にもなりますから、必須だと考えています。

 

その個別対応は誰の為に行うのか まとめ

今回書いた内容の他にも、実はアレルギーではなかったが、昔食べた後の体調不良をその食品のせいだと決めつけてしまっていたケースなどもあります。

こうなると本人は実は食べられる食品を人生から削除されていたということで人生の質を下げてしまう可能性もでてきます。

通院、診断を受けるというとネガティブな印象を持つ方も多いですが、実はこういったように、制限する必要がなかったことが分かったり、少し服薬すれば通常の食生活で大丈夫というお墨付きをもらえたりすることもあります。

そして何より大きい病気が早く発見できることもあります。

生活に変化がないのに一気に隊中の変化があった場合などは念のためという気持ちで通院してみることをお勧めします。

本人の現状に合わせた対応をしっかり行うための医学的根拠を整えることで、健康的であり、人間的な生活を長く続けることにつながると思います。