高齢者の減塩食についてフレイルの面から考える
高齢者の方の健康課題の上位常連に高血圧があります。
特に太っていたり、不健康な生活を送っているわけではありませんが、高血圧は原因が分からないものも多いので、糖尿病などのように気を付けて予防がしにくく、どうしても血圧の高い人が増える傾向があります。
そして、高血圧になる、あるいは血圧高めであることを改善しようとすると、出てくる方法に減塩食というものがあります。
これは血圧を固める原因の一つに塩分の過剰摂取があるためで、高血圧治療のガイドラインにも1日6g未満の摂取量にするように推奨されています。
では、実際に1日6gというと、体感的にどんなものになるのかというと
味が薄く、なんとも味気ない食事になります。
汁物は1日1杯が限度(食事内容によっては無し)なので、日本食の基本である一汁三菜すら維持することが困難になります。
味気ない食卓になってしまう理由として
日本の料理に使用する調味料である、塩・醤油・味噌にはもれなく塩分が含まれるので、こういった調味料の使用に大幅に制限がかかってしまうことがあります。
市販のコンソメや中華スープ(だし)もかなり塩分が含まれるので、ベースになる調味料が軒並み使えなくなってしまいます。
減塩食が招く不健康
こういった減塩食が高齢者のフレイル(虚弱)と言われる状態を招く原因の一つになっている面があります。
もちろん高血圧が原因で病気になってしまうことがあるので減塩自体は大切なのですが、それによってフレイルになってしまうと多くの問題を抱えます。
フレイルの問題点
フレイルとは病気の状態ではありません。
病気になりやすい状態、あるいは病気になってしまうと重症化しやすくなってしまう状態をフレイルと呼んでいます。
目に見えて分かるものではありませんが弱っている状態と言い変えることができます。
なぜ減塩食でフレイルになるのか?
では、どうして減塩食を提供することがフレイルにつながるのでしょうか?
これは理由としてはシンプルで、減塩食だと食欲が沸かない、それによって実際に食事を食べる量が減ってしまう為です。
食事が不足すれば、必要なエネルギーや栄養の摂取がされなくなってしまう、栄養素の欠乏、あるいは不足という状態が慢性化してしまうことで体の免疫力は低下し、病気になりやすく、なった際には重症化しやすい状況に陥ってしまいます。
減塩食は提供して終わりではない
こういったフレイルとの関係から減塩食については慎重に導入・継続していくことが望まれます。
本人の同意が得られるかどうか
実際に提供し、食べる量が低下しないか
この2つについては必須であり、本人の意向を無視して、食事を食べない(ハンガーストライキのような感じ)になってしまっては、減塩食を提供する意味自体がなくなってしまいます。
栄養士に多いのですが、必要だからと減塩食を提供して、そこで満足しきってしまうことの危険性がここに見えてきます。
個別に食事の状況を把握することはとても大切です。
例えば、元々1日の塩分10gの食事を提供していて、少食の方の場合、半分しか食べていないのであれば、塩分の摂取は5gであり、ガイドラインの数値を下回っています。
つまり、減塩食の必要はない
でも、今の栄養士の仕事の仕方だと多くの場合、「部食べた場合に塩分6g以下」という不必要な縛りの食事を提供してしまうでしょう。
数字だけをみて本人を見ていないとこういったことが起こり得ます。
もちろん家庭でも同様で、塩分制限のレシピとにらめっこして調理しても、ほとんど食べてもらえないのであれば、減塩食を行わないという選択肢も一考の余地があります。
特に高齢者の場合、食生活はそれまでの人生の何十年をかけて積み重ねたものです。
それをいきなり変えること自体望まれることは稀ですし。
今後の人生を考えて、高血圧の改善が必須であるか、だましだまし付き合っていくのかを検討することは重要です。
もちろん若い世代であれば、だまして付き合うと天寿を全う擦る前に、高血圧由来の何らかの病気になる可能性が非常に高いので、減塩食に慣れる必要はあります。
食事についても人生設計の一つと考えて、先を見越して考えていく必要があるということを高齢者の減塩食とフレイルの関係性は教えてくれます。