目次
食事摂取基準と栄養所要量は何が違うのか?
現在僕が献立作成をする際に基準としている対象者のデータは食事摂取基準を参考に計算しています。
1食のカロリーをどの程度に設定するか、その他栄養価のバランスはどうするかなどです。
昔は同じ仕事を栄養所要量という基準に沿って算出していましたが、この2つにはいったいどんな違いがあるのでしょうか?
用途は変わらないが本質が異なる
食事摂取基準は2005年版からスタートし、それまでは栄養所要量というものを遣っていました。
用途としてはこの2つは変わりません
そんな中で大きな違いは以下の2点になります。
①基準の数値に幅がある
栄養所要量では何歳男性は何㎉のように数字がバシッと一つ定められていました。
しかし、食事摂取基準ではこの考え方に幅ができていて、不測のリスク、過剰のリスクという考え方に広がっています。
個人差などがある点についても考慮されるようになり、栄養士ごとに柔軟な対応を行うことができるようになりました。
②目的が広がった
栄養所要量の目的は栄養の不足や欠乏を防止するというものでした。
今ほど食べ物が溢れていない時代からあるものだったこともあり、過剰摂取のリスクはほとんど考える必要がなかったという背景も影響していました。
一方の食事摂取基準は従来通り不足や欠乏のリスクも踏まえつつ、過剰摂取による健康障害の予防を考慮するようになりました。
そして、この頃から定着していた生活習慣病の一次予防も大きな目標として取り入れられるようになっています。
食事摂取基準の目的
食事摂取基準は上記のように幅を持った考え方と共に4つの目的に沿って作られています。
食事摂取基準の目的1:不足・欠乏の予防
栄養所要量の頃の目的も引き続き継続しています。
この背景には カルシウムやビタミンDが依然不足しているという実情があります。
食事摂取基準の目的2:過剰摂取の予防
栄養の過剰摂取による健康障害が増えているので、その予防も重要な要素となっています。
食べ過ぎによる過剰摂取は後述する生活習慣病につながりますが、かなり極端な例にならなければ健康障害とまで言われるレベルにはなりません。
では、過剰摂取による健康障害の原因と鳴るもの何かというと
サプリメントの過剰摂取です
サプリメントだと食事では到底とれないような栄養をごく簡単に摂取することができてしまいます。
そしてよくある勘違いに栄養は多く摂取した方が良いというものがあります。
基本となる推奨量を上回る量を摂取してもその効果は実は期待できません。
サプリメントはたくさん摂するためではなく、不足を補うという目的で摂取することが本来的な使用法です。
食事摂取基準の目的3:生活習慣病の一次予防
一次予防とは、生活習慣病にならないようにするという予防になります。
生活習慣病の原因として、過剰な糖質の摂取や運動不足などがあるので。事前に防ぐことを目的としています。
2020年版からは高血圧、脂質異常症、高血糖、腎機能低下の4つについては重症化予防も目的に追加され、それぞれの症状がある人に対してのガイドラインが示されるようになりました。
重症化予防について4つのものに限定されている理由としては、食事との関連性が科学的に実証されているものということになります。
これは「エビデンスが十分である」という言い方もできます。
今回ここに挙がらなかったものは食事との関連性についてまだエビデンスが足りなかったということです。
食事摂取基準の目的4:高齢者の低栄養、フレイル予防
これも2020年版から追加されたもので、高齢者の栄養状態の改善を目的としています。
日本人の平均寿命は長いことで有名ですが、健康寿命についてはそこまで高くありません。
寿命だけで考えると
健康で100歳まで生きる
最後の10年は寝たきりで100歳まで生きる
この2つがまったく同じ評価になってしまいます。
健康寿命を伸ばすことを目的とすることは
健康に長生きするということに目標が全身したと考えることができます。
栄養所要量と食事摂取基準の違い まとめ
栄養所要量から食事摂取基準委変わった大きな転換期は
飽食の時代と言われ、食べるものに不自由しなくなったことが背景にあります。
食べものに困るころにはなかった様々な問題に対応するために時代に合わせて食事摂取基準という考え方が生まれたと言えます。
そんな食事摂取基準にはひとつだけ欠点があります
それは栄養素単位での数値しか乗せられていないという点です。
例えばカルシウムを1日600㎎と言われても、僕たちはカルシウム自体を直接食べるわけではありません。(サプリメントを除く)
食品に展開してカルシウム600㎎をどう摂取するべきかが示すことができれば、もっと一般的にも受け入れられるものになると思います。
現在のものだと食品成分表とセットで必要だし、それはあまり一般的ではありませんから。