栄養ケアマネジメントの運用について
少し前に栄養ケアマネジメントについて
高齢の施設ではある程度導入されているものの、障害者施設ではそれほど導入されていない旨の内容を挙げました。
今回はやや具体的にうちの施設でどのように運用されているかを、栄養士向けになりますが、書いていこうと思います。
入所時の栄養ケア作成
うちの施設では入所希望者が大勢待機しているので、入ることができる状態になったら、その中から候補となる方についてのカンファレンスを開催して、実際にどの方が入所するのかを検討します。
ちょっと話が逸れますが、この際にポイントになるのは緊急性の高さなども含まれるので、こちらで「誰それが良い」などと一方的にこちらの都合で選べるということはほとんどありません。
やはり入所という施設を利用したいと心から思う程の方は、ドラマよりも複雑であったり、大変な人生を歩んでいたりします・・・
そのため、簡単に決められないことが多ですね。
さて、話を戻して、入所時にはこのカンファレンスで、食事や栄養状態についても今まで関わってきた様々な機関や施設の方から情報収集を行います。
その内容から、本人に必要な環境設定や食事についての基本情報を初回の栄養ケア計画に反映させていきます。
そして入所時に来られる方であれば、ご家族に栄養ケア計画の内容を説明し、サインを頂いて食事提供の開始としています。
ちなみにうちは独自の考え方ですが、入所して半年はアセスメント期間と考えています。
これは生活する環境が変われば、本人にも様々な変化が出る事から、事前情報だけで判断することはせずに、事実本人の状況がどうなっているかという点を見て、半年後の中間モニタリングで変更を加えていきます。
この仕組みは本当に重要で、実際に入所してみたら「事前の情報と全然違う!」なんていくことはザラにあります。
場所と関わる人が変われば当然なのかもしれないですが。
そのため、後述しますが、僕は半年に1回は全員の栄養ケア計画を更新するようにしています。
スクリーニング・アセスメントの運用
実際にはスクリーニングをして、必要に応じてアセスメントを取ったり、必要な時期に最低限の情報を集めて、これらを行うだけでも十分とされています。
僕はどちらも毎月低リスク者は1回、中・高リスク者は2回、スクリーニングもアセスメントも更新しています。
これは支援スタッフが毎月1日と15日に体重測定等を定期的に行ってくれるので、それらの情報から健康状態などが見えるようフィードバックできるからです。
そして、入所時期がバラバラなので、各自で更新時期を変えてしまうと、更新時に混乱してしまうので、ならば全員細かい間隔で更新してしまえ!
という乱暴な考え方です(笑)
支援スタッフが情報を打ち込むソフトと、僕が栄養ケアマネジメントを行うソフトに連動性があるので、直接会議などしなくても、お互いの情報を共有することもできるので、「○○さんは痩せ気味傾向だったが、この2ヶ月は体重増加が続いている」など入れて置くと、それを見た職員が「最近間食の内容が少し変わった」など、情報の共有や、些細な場面の変化などに気づくきっかけになるので重宝しています。
栄養ケア計画の更新
うちでは毎年2~3月に次の年の契約更新の為の面談
(※後に誕生日ごとの更新に変更されました、それにより半年後の見直しなども人によって時期がズレています)
中間のモニタリングは8~10月に実施して、今までの支援内容の説明、それを踏まえて残りの半年はどのように支援を行うか説明する面談を行います。
そして、その時に合わせて栄養ケア計画を更新しています。
本来は栄養ケア計画は変更が無ければ更新しなくても良いので、テクニックの一つとして、あまり変更しそうにない内容を盛り込んで、更新を避けるなんてこともできるのですが、個人的にはそれだと加算を取る為だけの役に立たないものになってしまうので、今のやり方は大変ですが、案外気に入っています。
栄養ケア計画更新の実際の流れ
①事前のカンファアレンスに更新(仮)した栄養アセスメントを提出して会議参加
②そこで出てきた情報を集約して栄養ケアマネジメントを修正・完成
③ご家族との面談時に内容の説明を行い、サインをいただく
④新しい内容の栄養ケア計画に基づいた食事提供が開始
栄養ケア計画更新の為だけに会議をすることは、施設職員全体への負担増になるので、全体のカンファレンスの時に、栄養・健康面の話題も盛り込んでもらっています。
というか、本人を語る時に健康かどうか、は必須の情報でもありますから。
注意する点としては、栄養ケア計画作成の元になる会議にはサービス管理責任者のように内容の確認が必須となる人がいるので、新しくそういった会議を立ち上げる際には参加者の設定は少し気を使う必要があります。
これは栄養士が勝手に栄養ケア計画を立てて、誰も知らないまま遂行しないとうにするための部分かな、と勝手に解釈してます。
うちは他にも所長や施設長の押印ももらって、はじめてご家族や後継人の方に提出できるので、間違えは無いと思います。
栄養ケアマネジメントについて僕の感じる課題
入所の施設に入ると健康状態が整うので、肥満であったり、糖尿病の方は、普通の生活を送るだけで改善していく傾向になります。
ただし!
例えば身長160cmで体重が100kgだった方が、90kgに減った場合に、ご家族から最も多く見られた反応が
「施設に入れたら痩せてしまった」「かわいそう」というものでした。
まだまだ痩せさせたいのですが・・・
標準体重などの指標はそういったご家族の前では無力に等しく、なかなか理解していただくまでには時間がかかります。
痩せたということ自体がネガティブな出来事として捉えられてしまうことがあります。
医師から「すごく良い状態」と言われても、血液検査の結果が改善されても、難しい部分があります。
これはご家族の多くが高齢であり、食べ物が足りないという経験を実際にしたことがある方々であることも理由の一つで、10年後くらいには理解を得られるかもしれませんが。
こういった面の改善について、栄養・健康に関する一般的な知識の向上でどこまで高めることができるのかという点も、栄養士として社会に貢献する面からも必要になると思います。
そういったバックボーンがしっかりとして、ご家族含めた周囲からの理解も得られるようになると、更に効率的にこういった健康状態を向上させるための取り組みはより力を発揮できると思います。
こうしてみると、栄養ケアマネジメントについて
大変だから行えないという面のハードルが、やってみるとそこまで高くないということがちょっと見えてくると思います。
実施できる施設が増えることを願って。