骨なしの魚を使用するメリットとデメリット
給食業界では、魚の切り身から骨を抜いてある商品が一般的になってきています。
これは高齢の施設から需要が高まり、その便利さが少しずつ他の業界にも伝わっていったことに由来します。
今回は骨なし魚を使用するメリットとデメリットについて書いていきます。
そもそも骨なし魚とは?
骨なし魚は切り身になっていて、中の小骨まで抜いてあるものを言います。
テレビなどでたまに加工している様子が流れますが、主に中国で加工されています。
切り身を半分にして中の骨を小さいものまで抜いていきます。
その後決着剤という食べても大丈夫な接着剤のようなもので切り身をくっつけて完成です。
工程は見ない方が美味しく食べられる気がします。
骨なし魚を使用するメリット
では、最初に骨なし魚を利用するメリットを紹介していきます。
老人施設給食などからここまで広がった理由はこれらのメリットによるものです。
メリットその1 食べやすい
何と言っても食べやすいです!
丸ごと食べても骨が無いので問題ありません。
食べながら骨を取るという作業もないので非常に食べやすく、食べる時間も短くなります。
メリットその2 安全性が高い
小骨が喉に引っかかったりする恐れもありません。
これらは大したことが無いように思われることもありますが、飲み込む能力や喉に異物が侵入した際に吐き出さ鵜能力が落ちている(高齢の)方などには非常にありがたいところです。
食事を介助する側としても安全性が高まるので、食事介助や見守りなど各段に楽になります。
メリット3 魚嫌いでも食べられる人が多い
魚が嫌いという人の中で一定数の方は「食べる際に骨を取るのが面倒、刺身は好き」という傾向があります。
こういった場合には骨が無いというだけで魚へのイメージが変わり、しっかりと食べてもらえるようになったりします。
このように食べやすく安全であるという面から老人施設では概ね骨なしの魚が使用されているほどに市場が高まり、今や在宅の方向けの配達される食事や障碍者福祉施設などでも使用され、僕の現在勤務している施設でも骨なしの魚が使用されています。
骨なし魚のデメリット
では、これだけ大きなメリットのある骨なし魚にはどんなデメリットがあるのでしょうか?
これらが原因で骨なしの魚を使わないというところもあるので紹介しておきます。
デメリット1 魚が生臭い
これは使用する魚の品質が問題なのか、骨を抜くという工程に時間がある程度かかるので。新鮮さを失った状態で加工されているためかは分かりませんが、基本的に穂名無しの魚は生臭く、このため外食店での使用はほとんどありません。
中国で骨を抜いて冷凍してから日本に入ってくるので新鮮さなどが犠牲になるのはしかたのないところです。
デメリット2 骨が無いという不自然さ
もちろん自然に海を泳いでいる魚のほとんどに骨があります。
切り身にしても小さい骨などは本来入っているものです。
それを箸で取り除いたり、小骨ならかみ砕いたり、口から出して外したりするわけです。
面倒ではありますが、こういった魚を食べるために本来必要な工程を飛ばすことで、それを行うための能力は不要となり、衰えてしまいます。
機能維持という点では骨なしの魚をあえて使わないという選択もあります。
多くの施設で骨なし魚を使用する際には、食べる方全員分を骨なし魚に切り替えています。
こうなると、骨を自分で取ることができる、小骨くらいなら問題なくかみ砕いたり飲み込んだりできる方からもその作業を奪ってしまうことにもなります。
このため、骨なしの魚の使用に積極的な人もいれば、なるべく使用しない人もいます。
何を大事にするかが異なるだけで、どちらが正解というものでもないのだと考えています。
骨なし魚の進歩
僕のいる施設は僕が来る前から骨なしの魚を使用していたので、食べる側がそれに慣れていることから、骨ありに切り替えることはしていません。
骨の無い魚の感覚で食べてしまうと思わぬ事故につながってしまうためです。
そんな僕に施設では日本食研さんの仕込み素材というシリーズの骨なし魚を使用しています。
これは骨抜き魚を酢で洗い、日本酒に漬け、昆布じめしてある商品で、課題であった生臭さを解決していますし、調理後も従来の骨なし魚よりふっくらしていて美味しいです。
価格もそれまでのものとほとんど変わらないので、導入も簡単でした。
このように市場が広がれば商品も改善されていくので、今後デメリットとなっている部分については良くなっていく余地もあります。
まとめ
骨なし魚にはメリットとデメリットがあります。
施設での食事の方向性を出すことでメリットに注目して導入するのか、デメリットに注目して施設では取り入れないのかを判断することになると思います。
安全性といっても単純ではなく、機能維持することで安全性が高まるという考え方と、リスクを完全に取り除くことで安全性が高まるという考え方は、目指すところが同じでもアプローチは全く異なるものになります。
その一環として骨なし魚についても考えるきっかけをくれるものだと思います。